市場の「見えざる手」による企業の監視は有効か? 企業はなぜ存在し、社会をどう変えてきたのか
東洋経済オンライン / 2024年4月19日 8時20分
このような資本主義制度の台頭をどう評価するべきなのだろうか。アダム・スミスは、最終的には最善の結果をもたらすものだと考えていた。『国富論』の中で市場は「見えざる手」の監視下にあると論じられているのは有名だ。
利己的な個人がそれぞれ自分の利益ばかりを追求しても、「見えざる手」の調整機能が働いて、結果的には社会全体の利益が促進されることになるという。
「見えざる手」が具体的にどう働くかは明らかではないが、それはおおむね需要と供給の関係にもとづくものだった。つまり、企業どうしが市場の需要に従って競争すれば、おのずと社会に必要な財やサービスが手頃な値段で供給されるようになるという理屈だ。
この資本主義の「見えざる手」という考え方は、以来、世界じゅうの経済学者や、政治家や、経営者を魅了し続けてきた。大統領選挙の公約にも、国の政策にも、シンクタンクの白書にも取り入れられている。
「市場に問題の解決を委ねよ」、「市場を基盤とする取り組みが求められる」、「民営化すべきだ」等々、日常的に耳にする言葉にも、その残響が感じられる。
経済学者ミルトン・フリードマンが次のように結論づけたのも、「見えざる手」という考え方に導かれてのことだ。「企業の社会的な責任はひとつしかない。それはゲームのルール内で、利益の増大を目的とした活動に資源を振り向け、取り組むことである」。世界にこれほどまで大きな影響を及ぼしている経済理論はめずらしい。
一方で、「見えざる手」がほんとうにそんなによいものなのか、あるいはそもそも存在するのかについて、疑問を投げかける識者も少なくない。世界に災いを招くものとして、何百年にもわたって世の中から非難されてきた歴史が企業にはある。
(翻訳:黒輪篤嗣)
ウィリアム・マグヌソン:テキサスA&Mロースクール教授
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