全員カモ!?激安商品売る企業「不都合な真実」 安物買って後悔しないための「金融リテラシー」
東洋経済オンライン / 2024年4月19日 10時30分
「安い」と思って買ってみたところ、あとからオプションを加えると実は割高だったという経験は多くの人がしていることだろう。売る側はサービス料や手数料といった目に見えないコストを隠しているから、結果としてリテラシーが低い人はだまされる。安さの裏に潜むカラクリである。
世界的な心理学者でイグ・ノーベル賞も受賞した著者のダニエル・シモンズ、クリストファー・チャブリス両氏は、決して安くはない商品を押しつけようとする売り手を撃退する方法を最新刊『全員“カモ”』で明らかにしている。その方法とは――。
トータルでは得ではない格安プリンター
日々の生活は、私たちの判断や態度にいつのまにか影響を与える要素であふれている。そのわかりやすい例がプリンターだ。
以前は高価だったが、今は非常に安く、メーカーがただ同然で消費者に配っているようにすら思えることもある。しかし、近年の設定価格は、プリンターの耐用年数中に消費するトナーやインクの総費用を考えるとそれほど得ともいえない。
格安のレーザー・プリンターの場合、新品のトナーカートリッジ一式(ブラック、シアン、イエロー、マゼンタ)の値段はプリンターの本体価格の2倍もするが、2000ぺージも印刷すればインクがなくなってしまう。
プリンターの販売会社は、総保有コストを知っているが、それを目立たせようとはしない。インクやトナーの長期費用は、経済学者のザビエル・ギャベックスとデイヴィッド・レイブソンが「ヴェールに隠された属性」と呼ぶものである。購入判断に対する決定的な情報だが、消費者には見えないようになっている。
ヴェールに隠された属性のなかには「手数料」や「サービス料」といったわかりやすい追加料金もある。これらの属性が目に見える形で提示されていても、消費者は追加的な費用を支払う傾向がある。
総コストで見ると、安いどころか割高
ヴェールに隠された属性を明らかにして商品の真のコストを知るのが難しい場合がある。プリンターの場合、小売販売員が1枚当たりの価格や、プリンターの耐用年数中に購入者が費やす総額を把握していない可能性がある。銀行や投資信託の手数料も同様だ。政府は開示を義務づけているが、企業の窓口担当者は、顧客に料金体系を説明できるほど理解していないこともある。
だまされないようにするには、隠されたコストを明らかにすることが重要になる。必要な情報が入手できても、直感的に理解するのが難しいものもある。たとえば、マイホーム購入にかかる総コストだ。マイホームも、プリンターと同じく本体の価格で提示されるため、購入者はそれ以外のコスト(契約手数料や住宅ローン、税金、維持管理費、保険料など)を自分で見積もらなくてはいけない。
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