大動脈解離の73歳「スペインから日本」目指す背景 異国の地で下半身マヒになった女性の帰国とは
東洋経済オンライン / 2024年4月20日 12時0分
自転車屋の店主が、文恵さんの顔を不思議そうに見ていた。ドアを開け、道路に足を下ろした。自転車屋の店主が駆け寄ってきて、声をかけた。
「どうしました」
「胸が、とても苦しくて」
「救急車を呼びましょうか」
「いえ、大丈夫です」
とは言ったものの、ただ事ではないと感じていた。他人から見ても救急車を呼びたくなるような顔をしているのだろう。痛みはどんどん増してくる。でも自分で救急車を呼ぶ勇気が出ない。文恵さんはスマホを取り出して、聖司さんに電話をかけた。
胸に激しい痛み、そして意識を失った
幸い、聖司さんの乗った電車はまだ2つ先の駅にいた。聞こえてくる母の、いつもとは違う声に不安が込み上げた。
「聖司がね、来てくれて、すぐに救急車を呼んでくれたんですよ」(文恵さん)
救急車は数分後に到着した。文恵さんは救急車に乗ると同時に意識を失った。判断が遅ければ、道端で倒れてしまったかもしれない。
大動脈解離とは、胸から腹部へかけて位置する大動脈の血管の壁が何らかの原因で剥がれ、中膜と外膜の間に(大動脈は内膜、中膜、外膜の3層から成っている)血液が流れ込む状態を指す。前兆となる症状はなく、極めて防ぎにくい疾病だ。文恵さんも直前まで、普通に車を運転していた。処置が遅れたことで命と落とすケースも多々ある。
「4月なのに雪が降っている寒い日でした。そんな気候も体にさわったのかもしれません」(文恵さん)
文恵さんが目を覚ましたのは、手術後の病室だった。
「私、北海道生まれなんです。目が覚めたら、北海道からも親戚たちが集まってくれていました」
もしかしたら、最悪の結果になるかもしれない──。そんな不安があったのだろう、北海道から集まった親戚たちは、目を覚ました文恵さんの顔を見て安堵のため息をついた。
日本に比べて負担の大きいスペインの医療事情
手術からしばらくして、文恵さんの体調も安定してきたので、まずはイエズスさんがオルメドに戻った。文恵さんはその後も日本で子供と暮らしながら療養し、3年が経ったところで夫の待つオルメドに戻すことを決意した。
聖司さんの話。
「母の体調はその後ずっと安定していたのですが、2023年の2月にオルメドで大動脈の再乖離が起きました」
朝、目が覚めてトイレに行った後に、突然床が抜けたように、ガクンと視界が下がった。足に力が入らず、その場に崩れ落ちるように膝をついたのだった。文恵さんは慌てて夫の名を呼んだ。妻のただ事でない様子に、イエズスさんはすぐに救急車を呼んだ。
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