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異国で「大動脈解離」の73歳、14時間の長旅の結末 車椅子に乗って10000キロ以上の大移動

東洋経済オンライン / 2024年4月20日 12時5分

聖司さんは当初、日本への移送を自分自身でやるつもりだった。しかし冷静に考えると、下半身麻痺の母親を連れて、1万キロ以上の旅だ。途中で何かあったらとても対処できるものではない。

「母は下半身麻痺なので一人でトイレに行くことができません。移動中の排泄に関する不安が一番大きかったです」(聖司さん)

インターネットで検索し、聖司さんはツアーナースの存在を初めて知った。

「こんなサービスがあるのかと、驚きました」

いくつかの会社に連絡をした。一番親身になって相談に乗ってくれたのが日本ツアーナースセンターだったという。

「海外の添乗に慣れたナースをアテンドしてくれました。あと、母の病状のことについても、いろいろなアドバイスをもらえてとても心強かったですね」(聖司さん)

ただ、飛行機の手配などは聖司さんの仕事だった。2020年以降、新型コロナウイルスの関係でスペインから日本への直行便は運休中だ(2024年10月に再開見込み)。スペインから羽田まで、経由地はいくつかの候補があった。

「“もう海外に行くことは難しいから、経由するなら最後はパリの空港の雰囲気を味わいたいなぁ”と母が言うものですから、マドリードのバラハス空港からフランスのシャルル・ド・ゴール国際空港まではエールフランスの便を予約しました。

そこから羽田まではJALです。これは僕のミスなんですけど、エールフランスとJALはアライアンス関係がないんです。だから、情報連携がうまくいかなくて大変でした。車椅子での乗り継ぎのこととか、機内での対応などなど、両方にいちいち問い合わせないといけなかった。もし次があるなら、同じアライアンスに加盟している航空会社だけにしようと思います(笑)」(聖司さん)

ツアーナースがいなかったら旅は実現しなかった

2023年12月某日。スペインのオルメドから埼玉県川越市までの旅がスタートした。

聖司さんの話。

「本当は僕も全行程で付き添いたかったのですが、日本に来てからの介護の準備があるのと、さすがに会社に申請しにくくて(苦笑)。でも、ベテランのツーナースがいるので、そこは任せることにしました」

イエズスさんと文恵さんは、オルメドからマドリード空港までは介護タクシーを使い、空港でツアーナースと合流。羽田空港から川越市の実家までは、聖司さんの運転する車で移動することにした。

道中、トイレで困らないように、食事と飲み物の量を減らすことを指示しようと聖司さんは考えていた。しかし、事前の打ち合わせで日本ツアーナースセンターのナースに相談すると「バルーンカテーテルを使う方法があります」と教えられた。

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