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異国で「大動脈解離」の73歳、14時間の長旅の結末 車椅子に乗って10000キロ以上の大移動

東洋経済オンライン / 2024年4月20日 12時5分

「尿道に管を入れて、尿を直接排出する医療器具です。これには本当に助けられました。飛行機は乾燥しているので脱水症状を起こしやすいことや、長旅であることを考えるとリラックスすることが大事なので食事もなるべく普段通り摂ってほしいと。母の身体のことを一番に考えていただけました。やっぱりツアーナースにお願いしてよかった」(聖司さん)

文恵さんは旅の様子をこう振り返る。

「私、足が動かないでしょ、だからエコノミークラス症候群が本当に心配で……。普段から足をなるべく動かしてもらうようにもしているので、お金が掛かるけどビジネスクラスを取ってもらったんですよ。ツアーナースさんは私の隣、パパ(イエズスさん)だけはエコノミーで我慢してもらうはずだったんだけど、息子がこういうときに備えてマイルを貯めていたので、直前でビジネスクラスにアップグレードすることができたのよね」

そう言って、夫婦は顔を見合わせて笑った。

シャルル・ド・ゴール空港での乗り換えは3時間ほどだった。街を散策する時間はなかったが、空港内で軽い食事を摂るなどし、フランスの空気を満喫した。

「地上に降りたら、まずは体調のチェックです。ツアーナースさんに血圧や体温を測ってもらったりして、異常がないかを確認してもらいました。そうした一つひとつの心遣いでとても安心して過ごすことができました」(文恵さん)

シャルル・ド・ゴール空港からはJALの飛行機だ。車椅子から座席への移動などは、日本人のパーサーも手伝ってくれた。

移り住んだスペインを捨て、日本で暮らしていく

フランスのシャルル・ド・ゴール空港から東京の羽田空港までは14時間を超える長旅だ。気になっていたトイレの問題もバルーンカテーテルのおかげで事なきを得た。

「機内食も美味しく食べられました」(文恵さん)

当初は全行程に付き添うつもりだった聖司さんは、羽田空港で両親の到着を待った。

「私は川越市の制度を利用して福祉車両をレンタルできたので、羽田空港で待機です。到着の日には日本ツアーナースセンターの事務局の方も空港まで来てくれました。初めての福祉車両でしたが、そこまでサポートしてくださったのも大変心強かった」(聖司さん)

ゲートの向こうに文恵さんの姿を確認した一同は、手を振って出迎え、いたわるように車椅子の周りに集まった。しかしまだ、旅が終わったわけではない。一行は駐車場に移動して、福祉車両に文恵さんの乗った車椅子を固定する作業に取り掛かった。

「車を借りる際に、一応のレクチャーは受けていたのですが、実際に使うのは初めてでした」(聖司さん)

不安もあったが、現場に駆けつけた日本ツアーナースセンターのスタッフが手伝ってくれたおかげで、実にスムーズに作業は完了した。

現在、文恵さんとイエズスさん夫妻は川越の自宅で暮らしている。5階建ての団地なのだが、エレベーターがない。3階にある自宅へは、スカラモービルという器具を車椅子にドッキングさせて上げ下ろししている。

「いろんな人にお世話なってます。オルメドもいい町だけど、こちらは息子たちがいるから安心して暮らせるのよね」(文恵さん)

海外に暮らし、文恵さんと同じような問題に直面している人は少なくないだろう。ツアーナースの存在は、そうした問題を解決するひとつのカギとなる。

末並 俊司:ライター

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