グーグルの「クチコミ」削除が難しい深刻な事情 主観的な感想だからこそ、高いハードルがある
東洋経済オンライン / 2024年4月20日 11時0分
クチコミで問題となるのは典型的には名誉毀損だが、裁判所に削除を認めてもらうための条件は厳しい。
・クチコミによって書かれた側の社会的評価の低下があること
・投稿内容に公共性、公益目的、真実性のいずれかが「ない」こと
・意見論評としての域を逸脱していること(*意見論評によるものの場合)
上記の点を、削除を請求する側に立証することが求められる。
そして、裁判所が削除を認める判断をする際に最も重視するのは、指摘されている内容に真実性がないこと、つまり「虚偽」といえるかどうかだ。しかし、クチコミという性質上、それが「虚偽」であることを立証することは、非常に難しい。クチコミの内容が客観的な「事実」にひもづく情報ではなく、主に主観的な「感想」や「論評」で成り立っていることが多いためだ。
「事実」に関する記載がなければ、第三者がそれを否定するための材料がそもそもないことになる。これが、削除のハードルを上げているのである。
客観的に見て素晴らしいサービス提供がされていたとしても、サービスを受けた人が主観的に満足しなかったという事情があれば、「満足できなかった」というクチコミを投稿することは十分あり得る。しかし、そのようなクチコミを投稿すること自体は、否定することはできない。
なぜなら、クチコミで訪れた店舗や病院の感想を書くことも立派な「表現」だからだ。表現の自由は、民主主義の前提と位置づけられる人権の中でも、最も重要とされる人権の一つである。自由な情報発信ができるということは、内容がどのようなものであれ、それ自体に民主主義の前提を支える価値があると考えられている。匿名アカウントの主観的な感想や論評であっても、原則としてその価値は変わらない。
また、Googleは単にプラットフォーマーとしてクチコミを掲載しているだけであり、そのクチコミの内容が本当の体験に基づくものかは調べようがない。そして、削除を請求する側も、クチコミを投稿した人物が誰か分かり、事実が述べられているなら、調査した上で「そういったことはなかった」と説明ができる余地があるが、匿名の人物が書き込んだ感想であれば、そもそも調査することができない。
「勝手に事実無根のことを書かれたのに、削除が難しいというのはおかしい」と考える事業者は多く、その思いはもっともと感じる。しかし、感想や論評などの表現を否定することが難しい以上、削除のハードルが緩められることはないのが実態だ。
ネガティブなクチコミで被る損害は大きい
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