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「アンチヒーロー」ヒットを予感させる3つの要因 随所に注目ポイントが散らばっている

東洋経済オンライン / 2024年4月21日 17時0分

日曜劇場という枠からして、おそらく、ヒューマニズムを担保するはずだ。『VIVANT』だって堺演じる主人公が第4話でむごい処刑を行ってざわつかせたが、後半、役所広司演じる父とのヒューマニズムあふれる関係が視聴者をホッとさせたものである。

『アンチヒーロー』も初回の終盤、刑務所に入った謎の男(緒形直人)が現れ、明墨と何か関係があることを匂わせている。

また、miletの歌う主題歌『hanataba』が歌詞を読むとラブソングのようであることからも明墨のダークっぷりはつかみであって、ヒーローとは、正義とは何かを問い直すことに力点が置かれると推察できる。

「アンチ(反)」という言葉は昔からあるが、SNSの時代、何かを批判する層が「アンチ」と呼ばれネットミーム化している。そのため親しみやすいワードになった反面、どこか悪い印象もつきまとう。『アンチヒーロー』の場合、従来の、類型的なヒーロー像とは違うという意味合いと、ネットミーム的な猥雑な印象によって、いい意味でつかみどころのない、多彩な像が結べるタイトルになったといえるだろう。

コートの襟を高く立てスマートに歩く長谷川博己。見てくれもよくて中身も優秀にちゃんと感じさせられる俳優は貴重である。

長谷川の滑舌のいい、単語の粒だった語りが説得力抜群。時折それが何やら怪しい話術のようなやや胡散臭さも感じさせるところがいい。真面目で清らかな話し方もできる俳優だが、詐欺師みたいなニュアンスを入れてくるところがうまさだ。第1話でも対立する検事・姫野(馬場徹)のほうがクセなく明瞭に語っているのだ。

光と影を勢いよく反転させるのではない、光と影の境界がにじみ揺れ動く、水彩画や木漏れ日みたいな役作りは、明智光秀を演じた『麒麟がくる』、金田一耕助を演じた『獄門島』(2016年 NHK)、哲学者を演じた『はい、泳げません』(2022年)などでも見せてきた技である。大正期の人権弁護士を演じた『リボルバー・リリー』(2023年)でも単なるいい人にならないようにいろいろ裏設定を考えながら演じていたようである。

単なるダークな人物ではなさそう?

『アンチヒーロー』の明墨は、犬を飼っていたり、子どもに優しかったり、関係性がまだ謎の紗耶という少女(近藤華)と話しているときは穏やかだったり、初回の終盤、空を見上げたときの表情が清らかそうだったりと、職場における彼の一連の言動は偽悪的に感じる。

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