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人類の将来に影響、プラスチック汚染条約の焦点 生産制限、問題プラの禁止めぐり交渉が山場

東洋経済オンライン / 2024年4月23日 8時0分

プラスチック汚染が深刻化する中、条約交渉は世界各国の市民の期待を背負ってスタートした。しかし、最大の焦点である生産制限導入の是非をめぐり、各国間で大きな対立が生じている。

ヨーロッパやアフリカ、ラテンアメリカの多くの国や島しょ国などが世界共通での生産制限の必要性を主張する一方、サウジアラビアなどの産油国や中国は生産制限の条項を盛り込むことに強く反対してきた。これまで日本は生産制限について、「世界一律ではなく、各国の事情を踏まえ、ほかの対策が効果を生じない場合に各国で検討すべき」というスタンスを取ってきた(下表)。

しかし、こうした日本政府の姿勢について、WWFジャパンの三沢氏は批判的だ。「世界共通の規制を設けなければ、たとえ条約ができたとしても各国がばらばらに対応する状況は変わらず、汚染がさらに拡大することになる」 (三沢氏)。

日本は容器包装プラごみの大排出国

国連環境計画の報告書によれば、日本は容器包装プラスチックごみの1人当たり排出量では世界第2位の大量排出国だ(下図)。その点からも、プラスチックごみ問題で大きな責任を負っている。

その一方で、「プラスチックごみの多くを有効利用している日本は優等生だ」とプラスチック関連業界は主張している。一般社団法人プラスチック循環利用協会の2023年12月発行の報告書によれば、2022年の日本の廃プラスチック総排出量823万トンのうち有効利用できたものは717万トン、割合にして87%に達しているという。政府もこの見方を支持しており、日本はプラスチックごみの適正な管理ができているとの主張の論拠にしている。

ただし有効利用のうち7割以上を「サーマルリサイクル」(熱利用)という名の焼却が占めている。いわゆるごみ発電やごみ焼却場の熱を利用した温水の利用などだ。これに対して素材のリサイクル(マテリアルリサイクルおよびケミカルリサイクル)は208万トンにとどまり、生産量も長年足踏み状態が続く。しかも素材リサイクルのうちの3割近くを海外向け輸出が占めている。

海洋へのプラスチックごみの流出量についての民間研究者の推計では、日本の流出量は上位を占める中国やインドネシア、フィリピンなどと比べると桁違いに少ないとされる。

その点ではプラスチック汚染問題の深刻度に違いがあるものの、大量焼却によって矛盾を飲み込んでいるのが日本の実態だ。日本から輸出されたプラスチックごみが途上国で適切にリサイクルされているかについても疑問が持たれている。

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