人類の将来に影響、プラスチック汚染条約の焦点 生産制限、問題プラの禁止めぐり交渉が山場
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 6時0分
「プラスチック汚染」を終わらせるための条約制定に向けた政府間交渉が、山場を迎えようとしている。2024年4月23日から29日にかけてカナダの首都オタワで、プラスチックの生産削減や有害プラスチック対策など重要なテーマについての議論が行われる。条約の主だった内容について、年内の合意を目指す。
海洋への流出など拡大が続く一途のプラスチックによる環境汚染に歯止めをかけられるのか――。議論の争点やあるべき条約の姿について検証する。
プラスチック汚染への対処が世界レベルで取り組むべき課題として持ち上がったのは、2010年代半ばのことだ。「2050年には海の中のプラスチックの重量が、魚の重量よりも多くなる」というエレン・マッカーサー財団による2016年の報告書が契機の1つになった。
【図】途上国は先進国と比べて、プラスチック汚染の影響を著しく強く受けている
その後、G7(先進7カ国)やG20(主要20カ国・地域)会合でもプラスチック汚染問題での国際的な合意がなされたが、この時点では主に海洋中のプラスチックごみ対策に焦点が当てられた。
難航するプラスチック条約交渉
しかし近年は、海のプラスチックごみ問題のみならず、地球環境全体や人間の健康への影響を含む、より幅広い課題への対処が必要だとの認識が広がっている。2022年3月の第5回国連環境総会において、法的拘束力のある国際条約を制定することが決議されたのは、プラスチック汚染に対する各国の危機感が一段と高まっていることの表れだ。
ただ、条約交渉は難航している。これまでに3度にわたって「政府間交渉委員会」(INC=Intergovernmental Negotiating Committee)が開催されたが、「生産制限など主要な論点についての各国の主張の隔たりは大きく、実質的な議論に入ることができていない」(環境省の大井通博海洋環境課長)。このままでは、年内取りまとめを目指す条約交渉が暗礁に乗り上げる恐れもある。いったい、何が問題になっているのか。
まず初めにプラスチックごみ問題の現状について見てみたい。
経済協力開発機構(OECD)が2022年2月に発表した報告書によれば、2019年の全世界でのプラスチックごみの発生量は約3億5300万トンと、約20年前の2倍以上に増大している。これに対して、プラスチック廃棄物のうちリサイクルされているものはわずか9%にとどまっている。
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