NHK朝ドラ「虎に翼」に中島みゆきを感じる理由 「女性活躍物語」よりも「弱者の物語」を
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 10時0分
NHK新朝ドラ(連続テレビ小説)『虎に翼』が好調だ。
男尊女卑な戦前社会の空気と制度を乗り越えて、女性初の弁護士、女性初の裁判所長となった三淵嘉子を伊藤沙莉が演じるというストーリー。視聴率もおおむね16%を超えている(ビデオリサーチ、関東・世帯)。
好調な理由もよくわかる。見ていて安心できるのだ。昨年の『らんまん』もそうだった。
NHK大阪制作の前作『ブギウギ』の、破天荒でどう転がるかわからないようなズキズキワクワク感もよかったが、NHK東京制作ならではの安心感・安定感が継続視聴につながっているのだろう。東京制作と大阪制作の違い。いいバランスだと思う。
寅子を演じる伊藤沙莉の安心感
安心感の源は、何といっても、ヒロイン寅子を演じる伊藤沙莉。『らんまん』の神木隆之介同様、主役が実績十分だと、何とも落ち着く。言葉は悪いが、ぽっと出の主演俳優を見定める間の不安感がない(かつて、不安感に耐えきれず、落ちて=視聴中止してしまった朝ドラがいくつもあった)。
伊藤沙莉×朝ドラといえば『ひよっこ』(2017年)だ。米屋の米子(しかし米嫌い、パン好き)という奇妙な役柄で存在感を残したのだが、あれから7年、あちこちで見事な演技を披露(個人的には伊藤+森田望智の並びにNetflix『全裸監督』を思い出し、不思議な気分になる)、ついに朝ドラで主役をこなせるまでに至った。
演技力以前に、すでに存分に披露している縦横無尽な「顔芸」だけで満足している私がいる。動きも軽快ではつらつ。声が大きく野太いのも、後述するヘビーな内容に立ち向かう役柄に合っている。
伊藤沙莉の脇を固める明律大学の仲間も実に個性的なメンツだ。さっそうとした男装の女性・山田よねを演じる土居志央梨、華族のお嬢さま・桜川涼子を演じる桜井ユキ、弁護士の妻で母親の学生・大庭梅子=平岩紙、朝鮮半島からの留学生・崔香淑=ハ・ヨンス。
特に、土居志央梨は、最大のめっけものだろう。近年では江口のりこを、NHK『これは経費で落ちません!』(2019年)で初めて見たときの異物感(褒め言葉)を思い出した。「よく見つけてきたな」と思う。
あと、オープニング映像(タイトルバック)が秀逸だ。個人的には朝ドラ史上過去最高のように思える。楽曲は米津玄師『さよーならまたいつか!』、映像はシシヤマザキによる。
ドラマの内容と明快に沿ったものになっていて、寅子/伊藤沙莉も登場するし、ドラマのストーリーを凝縮したものになっている。つまりは抽象アートというよりはコンセプチュアルな作りなのだ。
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