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「結論ありき」プロジェクトが大抵失敗する理由 夢の自宅改築が悲劇になった夫婦の計画から学ぶこと

東洋経済オンライン / 2024年4月25日 18時0分

「プロジェクトは始まったとたんに変形し、崩壊し始めた」とデイヴィッドはため息をつく。

施工業者は1階のキッチンに来ると、その場で飛び跳ねて床板の具合を確かめた。何かがおかしかった。古いキッチンを取り外し、その下を見て理由がわかった。「1840年代に手抜き工事が行われ、その後も放置されていたせいで、建物全体を支えられるだけの構造がなかったんだ」。1階の床をいったん全部取っ払って、そこから地下の建物の基礎部分に鉄骨梁と支持材を入れることになった。

夫妻はショックから立ち直ると、古くて見栄えの悪い床板について考えた。どうせ一度はがすのだから、古いものを戻すより、全部新しくしてしまったらどうだろう? キッチンの床はどのみち交換しなくてはならない。「床を半分だけ新しくして、残りはそのままってわけにはいかないだろう?」。夫妻は1階の床の総張り替えを決めた。

すると今度は、キッチンの隣のリビングに備えつけられた、雑な素人仕事のレンガの暖炉が気になり始めた。この際、これも取り替えてしまおうか?

そして、リビングにはさらに気に入らない部分があった。リビングの真横の階段脇に、小さな化粧室があった。デイヴィッドの母親が「品がない」とけなした部屋だ。あれを動かしたらどうだろう、床が撤去されている間なら簡単に移動できるし、と夫妻は考えた。「建築家は図面を一から引き直した」とデイヴィッドは言う。

また、どうせ地下を工事するのだから、地下に降りる階段を動かして、小さい洗濯・乾燥室をつくったらどうだろう? 「そんなわけで、新しい設計が行われ、新しい図面が引かれ、さらに遅れが出た」。そして新しい計画を立てるたび、複雑で悪名高いニューヨークの役所に申請手続きをする必要があった。

どの変更も無謀ではなく、気まぐれでもなかった。1つひとつが理に適っていた。そして1つの変更が別の変更を呼んだ。だが界隈の不動産価格は上昇していたから、いつか住まいを売れば、リフォーム代金の少なくとも一部は回収できそうだった。

プロジェクトはこうしてキッチンから断片的にどんどん広がり、ついには1階全体を完全に取り壊して再設計し、総入れ替えをすることになった。

どこからどう見ても災難だった

だが話はそこで終わらない。2階のメインのバスルームは悪趣味な上にカビていた。せっかく仮住まいに移り、業者に来てもらっているのだから、ついでにここも直してもらえば、将来的にやり直す手間が省けるわよ、とデイヴィッドの母親は勧めた。たしかにその通りだ。この変更も別の変更を、そしてまた別の変更を呼んだ。結局2階全体も完全に取り壊し、再設計、総入れ替えをした。

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