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「結論ありき」プロジェクトが大抵失敗する理由 夢の自宅改築が悲劇になった夫婦の計画から学ぶこと

東洋経済オンライン / 2024年4月25日 18時0分

「17万ドルの予定が40万ドルになり、60万ドル、そして70万ドルになった」。リフォームの最終的な総コストはおよそ80万ドルだったとデイヴィッドは言う。この莫大な金額を賄うために、デイヴィッドは引退を先延ばしにせざるを得ないだろう。しかも、この金額には仮住まいの費用は入っていない。当初の予定は3カ月だったが、デイヴィッドとデボラがリフォーム後の家に戻ったのは、1年半も後のことだった。

リフォームはついに完成し、全面リフォームのできばえには誰もが目を見張った。だが夫妻にとって、それは小さな慰めでしかなかった。もし最初から全面リフォームを計画していたら、設計も市への申請も一度ですんだし、業者は最も効率的な順番で作業を進められただろう。そしてお金と時間、心労の代償は、デイヴィッドとデボラが実際に払ったよりずっと少なくすんだはずだ。

プロジェクトはどこからどう見ても災難でしかなかった。

デイヴィッドがゆっくり考え、建築家が設計に労を惜しまなかったことは、疑いようがない。それでも、彼らの立てた計画──あれが計画と呼べるのであれば──はまずかった。このことは、「ゆっくり考える」という私のアドバイスの重要なポイントを浮き彫りにする。

「ゆっくり」することそれ自体がよいわけではない。デイヴィッドとデボラのように、長年夢を温めながら、ただ空想するだけという場合もある。組織は延々会議をして、堂々めぐりの議論をくり返すだけのこともある。

よい計画は「疑問」から始まる

さらに、あの建築家が行ったような綿密な分析は、どんなに時間と労力をかけても、視点が狭すぎれば、計画の根本的な欠陥や現実とのずれを発見し対処することはできない。そのうえ、下手に綿密なせいで、実際以上に確実な計画だという誤解を与えかねない。外観だけで中身のない、張りぼての建物のように。

これに対し、よい計画立案は、模索し、想像し、分析し、検証し、試行錯誤する。これは時間のかかるプロセスだ。つまり、よい計画を立てた結果として「ゆっくり」になるのであって、「ゆっくり」すればよい計画ができるのではない。

よい計画を生み出すのは、幅広く深い「問い」と、創造的で厳密な「答え」である。ここで注意してほしいのは、「答え」の前に「問い」が来ることだ。それも「なぜ、それをするのか?」という問いだ。問いが答えの前に来るのは当たり前、いや、当たり前であるべきだが、残念なことにそうなってはいない。プロジェクトは必ずと言っていいほど、答えから始まる。

デイヴィッドとデボラのプロジェクトは、「キッチンをリフォームしよう」から始まった。これは答えであって、問いではない。たいていのプロジェクトがそうであるように、2人の目的は明白で、考えるまでもないように思われた。唯一の問いは「いつ」始めるかで、それが決まるとすぐに詳細な計画を立てた。プロジェクトの目的を問わなかったことが、失敗の根本原因だった。

ベント・フリウビヤ:オックスフォード大学第一BT教授・学科長

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