サントリーCM「ひろゆき」起用に見る"したたかさ" 成田悠輔はダメなのに、ひろゆきは大丈夫な理由
東洋経済オンライン / 2024年4月27日 13時40分
発言や行動だけを切り取ってみると、ひろゆき氏は継続起用しても大丈夫で、成田氏は取り下ねばならない……ということに明確な基準は見当たらない。
筆者はかつて長く広告代理店で勤務していたが、実際のところ、広告を取り下げるか取り下げないかという判断は明確な基準があるわけではない。
広告している商品に健康被害をもたらすような致命的な問題が見つかったとか、広告表現が法律に触れるものだったとか、起用しているタレントが逮捕されたとか、そうしたケースであれば、無条件で取り下げにはなる。しかし、批判が起きたということであれば、各社がケースバイケースで随時判断をするのが一般的だ。
なぜ、ひろゆき氏の広告はOKなのか?
サントリーは日本でのトップ企業であるだけでなく、日本の広告・宣伝を牽引してきた企業でもある。創業者・鳥井信治郎氏の「やってみなはれ」精神は、これまで広告・宣伝でもいかんなく発揮されてきたのだが、それによって行き過ぎてしまうこともたまにある。
実際、これまでサントリーは、何度か広告・宣伝関連で炎上している。たとえば2011年、韓国焼酎「鏡月グリーン」のホームページで「日本海」の言葉に韓国・北朝鮮が主張する「東海」の表記を行ったことが批判され、謝罪のうえ、削除を行っている。
2017年には、新製品ビール「頂」のプロモーション動画がセクハラ的だと批判され、動画は公開中止となった。
これら過去のケースでは、サントリー側も炎上は想定しておらず、想定外の批判を受けて取り下げざるをえなかったと思われる。しかし、今回の「伊右衛門 特茶」の広告に関しては、一定の批判の声が出る可能性は想定しており、多少の批判では取り下げないという判断をしていたと思われる。
今回の「伊右衛門 特茶」の広告は、ひろゆき氏であるからこそ成立する、「ひろゆきありき」の企画だ。というのは、今回の広告は、ひろゆき氏がかつて行った「トクホのお茶を飲んでも脂肪は減らない」といった発言に、サントリー側が反論するというシナリオになっている。そして「ひろゆき氏が間違ったことを言っていた」という展開になる広告である。
その点で、この広告に同じ企画を他のタレントや有識者を起用して行うか否かという選択肢はなく、ひろゆき氏を起用してこの企画をやるかやらないか――という判断であったはずだ。
キリンの成田氏の広告に限らず、大半の広告は、表現は多様であっても「この商品・サービスはよいですよ」ということを、出演者を通じて伝えようとする。そして、その人が起用されるのは、商品を紹介するにふさわしい、人気、知名度、好感度、信頼性、知識などの要素備えているからだ。
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