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認知症の親を看取った2人の「後悔と幸せな最期」 稲垣えみ子×中村在宅医の「老いを生きる戦略」

東洋経済オンライン / 2024年4月29日 12時5分

中村:確かに、親の話を聞いていると、段々イライラしてきて、「だからね」と遮りたくなりますからね。

稲垣:そういえば、私の父にも「親孝行」してくれる人がいるんです。かかりつけのお医者さん。最近もの忘れがひどい、自分も認知症が進んできたんじゃないって不安になっていたら、「そういうふうに言っている人はまだまだ大丈夫ですよ」と言われたのがすごくうれしかったみたいで、その話を30回くらい私にしています。

中村:話を聞くことって大事ですね。話は変わりますが、認知症になる方もさまざまで、いつもにこにこしている方もいれば、怒っている時間のほうが多い方もいます。この分かれ道はどこにあるんだろうと思うときがあります。

稲垣:母を見ていて思ったことですが、認知症の方が怒ったり、悲しんだりするのは、自尊心が傷つくからなんじゃないでしょうか。忘れっぽくなり、周囲から指摘されて恥をかくようになることが増える。そうなるとニコニコしていられないのが当然だと思うんです。

中村:“認知症は、衰えていくことへの不安から解き放たれるプレゼント”と考える医師もいます。私の母も認知症があったんですが、母はしっかりしている頃「老いていく」ことがとても悲しかったようで、いつもつらそうでした。

でも、認知症が進むにつれて、そこは気にならなくなったのかかえって朗らかになったんです。病気への不安も軽減されていったようで、認知症になると、嫌なことも忘れることができ、そういう意味で認知症は神様の贈り物だと説く医師もいて、なるほどと思ったことがあります。

衰えていく自分とどう向き合っているか

稲垣:うーん、その意見にはあまり賛同できないかな。症状が進めばそうかもしれないですけど、その途中は本当に苦しいと思うんです。本人も周りも。そこをすっ飛ばして「贈り物」ってまとめてしまうのは乱暴な気がする。

肝心なことは、その苦しい時期をどう苦しくなくしていくかってことじゃないかと思っているんですけど。

中村:そうですね、おっしゃる通りだと思います。ところで、稲垣さんは、衰えていく自分とどう向き合っていますか?

稲垣:「あれもこれもやろうとしない」ということは、つねに意識していますね。いつかはできなくなるんだから、そのときに悲しんだり絶望したりしないように、あれこれ選択せず、与えられたもの、身近なものに満足できる自分を作っていきたい。

お花見も遠出せず、近所の桜を愛でて「こんなに咲いた」とか。最期は病床六尺だから、動けなくなってもそこから目にするさまざまなもので幸せを感じられたらいいですよね。

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