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新規事業に必要な「本業への貢献」ストーリー 顧客を引き付ける「フック」、収益を得る「回収エンジン」

東洋経済オンライン / 2024年4月29日 19時0分

しかし、事業のテーマ選定は難航しました。日本では既に高品質な交通サービスが安価に提供されているため、新しいサービスに高い利用料を払う消費者は限定的だったからです。

そこでまずは既存顧客の離脱防止と新規顧客の既存事業への送客を目的に、既存事業の魅力を向上させる追加サービスとして開発することにしました。具体的には、複数の交通機関や商業施設のデータを集約し、消費者の利便性を向上させる様々な機能を一括提供するサービスを無償でリリースし、既存事業のブランド名称を使ったうえで、新規サービスから既存事業への自然な遷移を促す設計を行いました。

「本業への貢献」を織り込んで投資対効果を試算することで、当初のシステム開発投資の合意を得てサービスの魅力を磨いていく、その後十分な顧客規模に達した段階で、有償の新プランや新サービス提供により事業単体でも利益を得るビジネスに進化させていく、という狙いです。

今では新サービスをクイックにリリースし、本業へ送客しながら育てていく、という勝ちパターンを、会社の戦略として確立しています。

研究開発の工数減/販売・物流の最適化

コスト削減への貢献についても、簡単に例を挙げてご説明します。ある大手メーカーは、従来のモノ売りビジネスと異なる収益源を探求していました。しかし、販売は代理店に任せており消費者の情報が不足しており、十分なサービス検討が行えない状況でした。

そこで、最初の顧客として製品の取り付けを担う協力会社を選び、業務支援サービスを提供することでデジタル化を促進しました。非効率な業務による働き手不足という業界課題の解決を志向したサービスです。経営状況の厳しい協力会社へ提供するため、サービスは非常に安価な設定でしたが、得られたデータ活用も含めた事業計画を立案しました。

具体的には、協力会社のデジタル化により、協力会社が持つ消費者情報をデータ化し、メーカーの本業の商品開発や在庫管理、次なる新サービスの検討に活かすことができました。

「本業への貢献」:フックと回収エンジン

では、実際にどのように「本業への貢献」を描けばよいでしょうか。思考の武器として「フック」と「回収エンジン」をご紹介します。事業を、顧客を引き付ける「フック」と、収益を得る「回収エンジン」の2つに分ける考え方です。

「フック」とは、顧客の獲得や集客を目的としたサービスや機能のことです。顧客に伝わりやすい価値と、他社との明確な違いを持つことが重要であり、必ずしも利益を生む必要はありません。一方で、「回収エンジン」は利益を回収するための儲かるサービスや機能を指します。

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