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「成果を出せない上司」は発酵を学ぶといい理由 答えのない不確実な時代のチームマネジメント

東洋経済オンライン / 2024年4月29日 11時0分

いわば、醸造容器の中に擬似的な生態系・エコシステムをつくり上げる発想法です。そのような、それぞれの「微生物の関係性に注目した発酵の形式」は、まさに、東洋人の「森全体を見渡す」思考にフィットします。

対して、発酵に関与する微生物が1種類だけ、例えば、酵母の活動に注目して、いかに酵母を増殖させていくかに注目していく西洋の発酵の思考は、「大木を見つめる」思考法と言えます。

他の日本の文化と「発酵」の共通点

さて、ここで、いくつかの他の日本文化と「発酵」の共通点を見ていきましょう。

「天の原ふりさけ見れば春日なる 三笠の山に出でし月かも」阿倍仲麻呂

国語の教科書の常連であり、小倉百人一首にも採られている有名な短歌です。この短歌と発酵の共通点は何だと思いますか。それは、制限の中に、小さな宇宙や世界を再現しようとしていることです。

日本の「発酵」は、複数の微生物を用いて調和を図るというものでした。つまり、「発酵」というタンクの中に、複数の微生物を投入し、そこに小さな生態系(エコシステム)をつくり上げるという発想です。

短歌も、31文字という制限の中に時間や空間の広がりを詰め込みます。阿倍仲麻呂が、遠い異国の中国にて月を見て、故郷の三笠の山を思い浮かべて詠んだ歌です。この31文字の中に、中国と日本、そして月という空間的な広大さや、遠い幼少期の思い出と今の自分という時間的な広がりを見事に詰め込んでいます。

このように、制限の中に小さな自然を再現し広がりを感じさせるという手法は、日本芸術が得意とするところです。

盆栽や箱庭なども、小さな鉢や庭という空間のなかに、自然を再現し、そこから雄大な広がりを感じさせる芸術です。茶室も限られた狭い空間のなかに、軸や花、あるいは茶道具や茶菓子などによって、その日に表現したい世界観をグッと濃縮させます。その世界に、招待する側である亭主や、招待される客人も取り込まれ、すべてが調和した、時間、空間が完成します。「複数の要素の関係に着目する」。これは、日本文化を理解していくときに、軸になるコンセプトです。

「発酵」と組織論、発酵は環境を整えること

この「複数の要素の関係に着目する」日本の発酵の概念を、組織論の視点から眺めてみましょう。

以前、懇意の味噌メーカーの方が、「人間は、麹と、水と、塩を混ぜることしかできない、混ぜたものを味噌に変えるのは微生物しかできない」とおっしゃっていました。多くの醸造メーカーの方は、「微生物が活動しやすい環境を整える」という表現をします。

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