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国策ラピダスとTSMC"2つの戦略"で決定的な差 早大・長内教授「ビジネスにストーリーがない」

東洋経済オンライン / 2024年4月30日 8時20分

できない事情があるのかもしれないが、もし軽視しているのだとしたら非常に問題だ。「韓国や台湾にできることは日本でもできるんだ」という根拠のない精神論で彼らと手を組んでいないのだとするともったいない。

逆に、自分たちでは量産を目指さないのも1つのやり方かもしれない。アメリカに製品のノウハウを提供するようなテスト用ラインだけを持った会社になるというような。

もしくは日本でしか作れないものを作るという意味では、NTTが開発している光電融合技術の開発を担う。この技術の成否も、日本にとっては世界をリードできるかどうか重要なポイントだ。そうすれば、少なくとも2030年までのストーリーが見えてくるはず。

つまり、何かしらのビジネスの仕掛けとしてラピダスにしかできないことを考えていく。その中の1つに、UMCをはじめ韓国や台湾と協業していくという考え方があるのではないか。

TSMC熊本工場にはストーリーがある

——一方でTSMC熊本には対照的な評価をしています。

今までの日本の技術戦略とはかなり様相が違う。 元々、経済産業省としては先端半導体の工場を誘致していたが、結果的には10年以上前の技術の半導体工場を作ることになった。それでも日本に誘致する意味があると判断したのだ。

ソニーや自動車産業というビジネスのストーリーが見えていて、それに必要な技術水準がある。必ずしも最先端技術が必要なのではない、というストーリーを実際に実現させたこと自体が日本では画期的だ。

加えて、第2工場、第3工場と連続的に投資を進めていっているところも理想的。既存工場からの利益を次の投資に回すという当たり前のことをやっている。

「現行の技術で失敗したけど、新しい技術で挽回するんです」という発想を日本は繰り返してきた。だがこれでは投資の原資がどんどん先細っていくので、結局いつまで経っても勝てない。こうした点がラピダスとは対照的だ。

——今は別々で動いている、TSMC熊本とラピダスのプロジェクトをつなげる提案もしています。

2つのプロジェクトを1つの戦略でまとめる会社を実際に作るかどうかは別として、新しいプロジェクトや投資を行うためには、基本的には既存のビジネスから得た収益を流すに尽きる。それができる構図を日本としてどう作るかが重要だ。

政府は両方にお金を出している立場なので、そうした連携にうまく持っていければベストだ。

——そもそも、政府が特定の産業や企業に多額の公費を投入することの是非についてはどう考えますか?

中途半端な投資は意味がないので、ある程度まとまった額を拠出したことは評価できる。あとは、まとまった額を出すからには、簡単に諦めないでほしいということだけ。中途半端に進めて、結局アメリカに売却するというのが、いちばん避けなければならないストーリーだ。

石阪 友貴:東洋経済 記者

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