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お金ではなく「サービスを配る」がなぜいいのか お金持ちにもサービス給付で格差がうまる理由

東洋経済オンライン / 2024年5月1日 18時0分

え? どうして? いえいえ。これは当たり前のことなんです。

年収100万円の人が100万円分のサービスを受け取れば100%の所得増になります。でも、年収1億円の人が同じサービスを受け取っても、1%の増加にしかなりませんよね。人間を等しく扱うと、所得の改善効果は貧しい人のほうに大きく出るのです。

では貧しい人にも税をかける、この点はどうでしょうか? 図をもう一度見てください。Aさんは、払った税金よりも多くの受益がありますよね。ここがポイントです。

税率は同じでも、そもそも所得や消費の額が違えば、税の負担額は変わってきます。

お金持ちは収入が多いのでベンツや土地を買います。貧しい人は少ない税、お金持ちはたくさんの税を払うけど、受益は同じ。格差が小さくなるのも当然です。

私たちは、税の負担だけで、貧しい人たちの痛みを考えがちです。ですが、もらうほうもセットで考えないと、本当の痛みはわからないのです。

貧しい僕と超リッチなみなさんがどちらも1000円払うとします。お金持ちと僕が同じ負担? そう思いますよね。

でも、もし僕が二人の払った2000円を全部もらえるとしたらどうでしょう。僕が得をしているのは、子どもにだってわかる話です。

サービスを受け取る喜びと税の痛み。この両者のバランスを考えなければ、社会全体の公正さなんて語れっこないのです。

国際的にはオーソドックスな考え方

以上の考え方は、国際的にはオーソドックスなものなんです。僕の知人でアメリカのノースウェスタン大学で教えているモニカ・プラサドさんは、ニューヨーク・タイムズで次のように言いました。

「貧困と不平などの削減にもっとも成功した国々は、富裕層に課税し、貧困層に与えることでそれをやりとげたのではない」

まさにそのとおりです。EUに加わっているヨーロッパの国々を見てください。日本の消費税にあたる付加価値税の最低税率は15%です。

ですが、イギリスと旧東欧諸国を除くと、日本よりも税率の高いこれらの国々のほうが、所得格差は小さいです。

なぜそうなるのでしょうか。日本では、消費税は貧しい人の痛みが大きな税だと言われるだけに、意外に聞こえるかもしれません。

実は、お金持ちはほんのひとにぎりしかいません。どんなに多額の税をかけても、入ってくる税収はたかがしれています。

ですから、貧しい人も含めてみんなが払う付加価値税を使い、豊かな税収をいかして幅広い層の暮らしを支えつつ、同時に貧しい人たちの暮らしも守っていく、そういう現実路線がEU加盟国ではとられたのです。

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