自民「全敗」でも岸田首相"会期末解散"を狙う事情 「絶体絶命のピンチ」に追い込まれつつあるが…
東洋経済オンライン / 2024年5月1日 8時40分
そうした中、岸田首相は補選最終日の27日、2度目の島根入りで「何とか逆転したい」と必死の形相で有権者に訴えたが、その効果もなく結果は惨敗だった。これについて地元の自民県連からは「かえって票が減った」(幹部)との声が噴出したが、岸田首相の側近は「敗北を前提に、覚悟を示すためのパフォーマンスだった」と解説する。
しかも、その時点で岸田首相は28日午後8時からの開票には党本部で立ち合い、結果を受けて自ら敗戦の弁を述べる意向を固め、秘書官に「談話作り」を指示したという。ただ、これは「接戦に持ち込めたことを前提にしたもので、結果的に当日の大手メディアの出口調査で大差の惨敗が確実となった同日夕刻には、茂木氏と連絡の上、党本部入りを断念した」(側近)とされる。
これは、裏金事件への対応を巡る岸田首相(総裁)の“独断専行”で茂木氏との溝が広がり、「茂木氏は辞任によって政権から離れ、秋の総裁選出馬へのフリーハンドを得ようとしている」との見方があったことが背景にある。
だからこそ岸田首相が茂木氏とも意を通じた結果、茂木氏は28日夜、補選結果を受け党本部で記者団に「厳しい状況だからこそ、一致結束して臨む必要がある」と、ことさら団結して岸田政権を支える姿勢を強調したとみられる。
こうしたことから、「今後の政局は表向き平穏なまま、政府は淡々と政策課題に取り組み、国会では政治改革を巡る与野党協議が続く」(官邸筋)ことになる。ただ、水面下では岸田首相と菅義偉前首相を旗頭とする「反岸田勢力」との暗闘が激化し、「政局は会期末が近づくにつれ、何が起こるかわからないという緊迫した状況になる」(自民長老)ことは間違いなさそうだ。
泉 宏:政治ジャーナリスト
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