「何の感情も抱かない」底辺校の生徒たちの異変 東海地方で30年働く先生が語ったこと(第1回)
東洋経済オンライン / 2024年5月2日 10時0分
学力が低く、授業についていくことができない「教育困難」を抱える生徒たちを考える本連載。今回お話を伺った鈴木先生(仮名)は、東海地域で30年以上、私立高校の教員として働くベテラン教師です。鈴木先生の高校は、偏差値40以下の私立高校で、昔も今も「教育困難な生徒」=「勉強がなかなかできない生徒」が多く通っています。
そんな先生の目から見ると、昔よりも現在のほうが、さまざまな意味で「深刻な」問題を抱える生徒が多くなっているのだそうです。自身も15年前に「教育困難校」を卒業した濱井正吾氏が、過去と現在の子どもの変化について伺いました。
教育困難校に通う生徒の質が大きく変化
みなさんは、「教育困難校」という言葉を聞いたことがありますか。
さまざまな背景や問題を抱えている子どもが通っており、生徒の学力の低さや、授業態度などの問題行動が原因で、教育活動が成立しない学校のことを指します。
「底辺校」と揶揄されることもある、こうした環境は、非行や校内暴力などが蔓延しているイメージがつきまといます。
しかし、偏差値40以下の私立高校教員として30年以上のキャリアがある鈴木先生(仮名)にお話を伺ってみると、過去と現在では、通っている生徒の質が大きく変わっていることがわかります。
教育困難校に関わる教員や、卒業生に話を聞く本連載の初回は、鈴木先生の高校の1事例を紹介したいと思います。
「今(鈴木先生の)高校に通っている生徒たちには、飢餓感がない」
開口一番、鈴木先生はそう口にしました。
「昔を振り返ると、私が勤める高校は地域の”底辺校”と揶揄されて、生徒や親自身も、将来を悲観し、焦っていました。
『このままだったら、自分(生徒)はちゃらんぽらんな人生を送ることになるかもしれない。食いっぱぐれてしまうかもしれない。そうならないように、頑張らなければならない』と。
つまり、何かしらの努力をする、気力がある生徒たちが多かったのです。そういう生徒たちに対する指導は、まだやりやすかったのですが、最近ではまったく状況が異なります。
『自分は、このままでいい』と考えてしまっていて、何かをやろうとする意欲が低下しているのです」
「今と昔で、生徒の心持ちは大きく変わってしまった」と、鈴木先生は嘆きます。
「学校の雰囲気も含めて、全然(質が)違っていますね。昔は、ヤンキーや不良と言われるようなグレた生徒が多くて、こちらの言うことに対しても、『うるせえ!』と言って反発してきました。私自身も、よく生徒から手を出されたものです。
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