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ポーランド政府が隠した、難民の「不都合な真実」 強制送還されるか、極寒の森の中を彷徨うか…

東洋経済オンライン / 2024年5月3日 13時30分

この映画がポーランドで公開された当時の政府は、非常に独裁主義的でポピュリズム、国粋主義的なところがある右派政権で、そんな政権がかなり長いこと続いていました。

彼らは特にプロパガンダとして移民・難民問題を政治的に利用してきたわけなんです。それは非常にレイシズムを含んだプロパガンダでした。難民のことを、我が国に避難を求める人々だとみなすことはなく、彼らのことをテロリストであるとか、小児性愛者であるとか、動物虐待者の集団であるといった言いがかりをつけて、国民に嫌悪感や恐怖をあおるようなプロパガンダをつくりあげました。

映画の公開時にも、政府からの攻撃がありました。それこそ法務大臣や大統領、首相といった、政治的な地位が高いような人たちが、わたしのことを売国奴であるとか、あるいはナチスのプロパガンダであるとか、ゲッペルス、スターリン、プーチンだとか、そういった非難を浴びせてきました。

政府はかなり本気で、自分たちの作品を妨害するためのキャンペーンを打ってきたわけです。でもそれはある意味、彼らが隠しておきたかったことを、わたしたちが明るみに出してしまうことを危惧してのことでした。

彼らはそれまでも、そうしたプロパガンダを利用することで、選挙に勝利してきたので、その時も彼らの支持者に向けてアピールをして、自分たちに一票を投じてもらおうと考えていたのでしょう。

でも彼らはやりすぎたんでしょうね。そのキャンペーンがあまりにも大げさだったために、民衆は何だか変だぞと気付いてしまった。

自分の目で見て、自分で判断したい、何が真実か見極めたいという方が増えて、結果的にこの作品への関心が高まって。こういう作品にしては非常に高い興行成績を収めることができた。

ある意味、逆説的に政府がわたしたちの作品のプロモーションをしてくれた形となりました。おまけに彼らはその後、選挙にも負けてしまった。その結果をこの映画がもたらしたというわけではないですが、人々の目が人道的な視点に変わってきたというところで、多少はこの映画が果たした役割もあったのではないかと自負しています。

手遅れになる前に描きたかった

――この企画を起ちあげた頃は、右派政権が力を持っていた時期ですが、そんな中でも、この題材を取りあげなければと思ったのは、どのような思いがあったのでしょうか?

それはやはりここで行われていることに対する怒りであったり、心配であったり、ある種の義務感のようなものでしょうね。

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