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ポーランド政府が隠した、難民の「不都合な真実」 強制送還されるか、極寒の森の中を彷徨うか…

東洋経済オンライン / 2024年5月3日 13時30分

わたしが脚本を書き終えたのが2022年の1月。その1カ月後にはロシアのウクライナ侵攻があったわけですが、この2つの状況がつながっているというのはひしひしと実感しました。わたしたちが描いている映画というのはその一部なんだと感じました。

われわれ人間がどのぐらいその世界を理解できているのか、あるいは他国の人たちに対する理解度はどんなものなのかということを感じさせられる。

難民に関しても、白人であるウクライナからの戦争難民は受け入れるのに、中東の人たちはそうではなかった。肌の色が異なることで、なぜ対応に違いが表れるのか、そのことに疑問を呈する人はいません。だからこそエピローグには、ロシアの侵攻に関して言及することにしました。

作品をつくり終えてからも、現実世界は非常にダイナミックな形で動き続けています。そうすると映画の視点というのもそのときの世界情勢に応じて変わってくるわけです。

だからこそ現代物をつくるというのは非常に危険な行為ではあるんですが、それと同時に、自分が今見ている思いを作品に込めることもできるんです。

巨匠ワイダ監督からの影響

――ホランド監督は『灰とダイヤモンド』などで名高い社会派の巨匠アンジェイ・ワイダ監督に師事されていたわけですが、ワイダ監督からの影響というのはどのようなものがあったのでしょうか?

ワイダ監督は自分のメンターでもありプロデューサーでもあり、一部の作品では脚本を書いたりもしました。彼が亡くなるまで、わたしたちはとても近い関係のコラボレーターでしたし、いろんなことについて話し合いました。自分の作品もずっと見てくれていましたし、アドバイスをくれたりもしました。

彼にとって重要だったことは、ポーランドの歴史をなるべく誠実に、ほかの国の方にも理解できる形で描いていくことでした。それはある種、自分もそうでありたいという理想でもあります。

晩年のワイダは、現代のヒーロー像とはなんなのか、ということをよく問いかけていました。おそらくこの映画を観てくれたならば、それがアクティビスト(人道支援家)たちであると。彼らが現代のヒーローなんだというこの作品での答えにすごく満足してくれるのではないかと思っています。

ポーランド政府が何もしなかったどころか、むしろ逆の非道な行為をする中で、基本的な人権、あるいは人としての価値を守るため、人々の平等のために戦うアクティビストたちがいました。まさに彼らが現代のヒーローだと思います。

壬生 智裕:映画ライター

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