イーロンによるツイッター買収最大の罪とは フランシス・フクヤマ「未来は絶望か希望か」
東洋経済オンライン / 2024年5月4日 20時30分
また、巨大なソーシャルメディアプラットフォームに力が集中してしまっているのも問題です。イーロン・マスクがツイッターを買収してからのことを考えてみてください。ツイッターが左派的な方向に向かっていたのを、彼は気に入らなくて買収してしまいました。
一人の裕福な個人の影響で、ツイッターは突然右派的な方向に傾いて、陰謀論などをまき散らしています。これは、民主主義にとって大きな問題です。私的な力はこのように集中させるべきではないのです。
インパクトが不明な生成AI
さらに3つ目の問題は、生成AIについてです。「生成AIが究極的にどのようなインパクトをもたらすのか」。これについては、まだ誰も理解できていません。「仕事が奪われる」という懸念の声もありますが、しっかり理解するには時期尚早でしょう。
これらの技術は、平等を推進するかもしれません。たとえば、スキルや教育水準が低い人にとっては大きな力になるかもしれません。これについては、まだわからないことのほうが多いのです。
生成AIのインパクトについてはまだ不明ですが、一方で、理解できるテクノロジーもあります。それは、ブロックチェーンと暗号資産です。
ビットコインの登場から10年以上が経過しました。しかし現在では、誰も使っていませんね。これらは、お金にまつわる人類の金融の歴史において最大の詐欺の一つである、と私は思っています。
こうしたテクノロジーのいくつかは、崩壊するバブルです。それと比較すると、生成AIは違います。とてもパワフルで、変革を起こすものになるでしょう。
75年間の平和に「倦怠」を感じる人々
――最後に、リベラリズムの話に戻りましょう。あなたは、リベラリズムへの希望をまだ失ってはいません。その理由を聞かせてください。
こうしたものは、世代的なサイクルで進みます。
反リベラルな社会で紛争を経験したり、人権を剝奪するような独裁制のもとで暮らしていたりすれば、リベラリズムは大きな支持を得ます。
一方で、人権が保障される体制のもとで、人々はとても幸せに生活を送ることができます。人権が保障される体制とは、移動の自由、思想の自由、言論の自由、批判する自由が奪われない体制です。
私たちは、過去75年にわたって平和で繁栄したリベラルな民主主義のもと暮らしてきました。この期間で、人々はリベラリズムに代わるもののひどさを忘れてしまったのです。
「やはり、リベラリズムは良いものだった」と気づく前に、私たちは反リベラリズムの期間を体験しなければならないのかもしれません。
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