王子HD、「薬用植物の王様」に注力する切実な事情 甘草の大規模栽培で「脱・製紙企業」目指す
東洋経済オンライン / 2024年5月4日 9時0分
「今後も毎年5~10トン以上の甘草を収穫できる体制が整っている」と、同研究所・取締役事業本部事業部長の八田嘉久氏は自信を見せる。
漢方薬の業界団体は歓迎ムードだが…
中国産甘草に依存している漢方薬メーカーは、国産甘草の大規模栽培の動きをどう受け止めているのか。
製薬会社など58社を会員に持つ日本漢方生薬製剤協会の生薬国内生産検討班・班長の小柳裕和氏は、「輸出規制などのリスクがある中国産の生薬に代わって国内産が確保できるのは願ってもないこと。甘草はとくに国内での栽培が難しく、王子HDの動きには注目している」と話す。
農林水産省も生薬の輸入量のうち7割が中国産に依存している現状を憂慮し、漢方生薬業界に対して国内産の栽培拡大を後押している。こうした動きの中で、王子HDの国産甘草の大規模栽培成功は「チャイナリスク」を排除する意味からも朗報であることは間違いない。
ただ、現状で国内の製薬会社・漢方薬メーカーが王子HD産の甘草を積極的に活用するかについては不透明だ。理由は3つある。
まず1つは、中国からの甘草の輸出が目に見えて減っている訳ではないことだ。確かに中国産生薬の輸出規制などつねに政治的なリスクはつきまとう。ただ、現状で喫緊の課題としてそれが顕在化している訳ではない。
2つ目は甘草に含有されているグリチルリチン酸の量の問題だ。中国で自生している甘草にはグリチルリチン酸が3~5%も含有されているものが多いという。
一方、王子HDが大規模栽培に成功した国産甘草は、日本薬局方で定められた甘草の有効成分基準である2%を超えているが、野生の甘草よりも含有量は少ないと見られる。価格面でも自生している甘草のほうが安く、含有量や価格面を考えると、国産甘草が中国産にすぐに取って代わるということは考えにくい。
3つ目は薬価の問題だ。漢方薬には公定価格が決められており、現状では中国産に比べて、生産コストが高い国産の栽培甘草を取り入れる動機に乏しいと見られる。
ただ、国産の甘草が中国産に比べて、品質で見劣りするということでは決してない。王子HDが現在力を入れているのが食品や化粧品など漢方薬以外の用途での活用だ。
1万トンのうち8割は食品、化粧品などの用途
「あまり知られていないが、国内で流通している甘草は漢方薬など医薬品の用途よりも、食品や化粧品などほかの用途のほうが多い」(八田氏)
北海道医療大学薬学部の高上馬希重教授らが2011年に甘草について研究した成果報告書によると、甘草の国内の輸入量は年間約1万トンとなっている。漢方薬など医療用途では約2000トンと2割程度に過ぎない。
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