GW盛況の異色フェス「板橋の高校生が企画」のなぜ 外国人の力をテコにした地域おこしのヒントを探る
東洋経済オンライン / 2024年5月5日 12時40分
さらに保健所を回ったときに、困ったことを知らされた。
「カレーが提供できない!?」
ネパール料理の1つでもあり、日本人にはわかりやすいメニューであるカレーだが、衛生上の理由から板橋区のイベントで取り扱うには制限があるのだ。そのことを出店者に知らせ、またどうすればカレーを出せるのかケーシーさんが保健所の助言を求める。
予算をどうひねり出すかも課題だった。公園使用料、テントやイスやテーブルなどのレンタル、電気代、音響、会場に飾る旗……出費はいろいろあるが、ケーシーさんの「営業」が実りネパール側の協賛がけっこう集まってくる。おもに日本で成功したネパール人経営の企業だ。
それに経費を削減するためのアイデアもみんなで考えた。
地域の祭りにときどき現れる地元密着のプロレス団体「いたばしプロレスリング」に協力を仰ぎ、出張プロレスを打ってもらうとともにリングを提供してもらい、試合以外のときはステージとして利用すれば、イベント会社を通じてステージを設営するより安上がりではないか……。
ポスターをデザインしたのも高校生
こうして日本人とネパール人が知恵を絞り、汗を流していくうちに、フェスのタイトルも決まった。「混ぜること」や「ごちゃついた感じ」をテーマに「ネパールのバザールで文化が混ざ~る!」と命名。
なんともキャッチーなタイトルをポスターに落とし込みデザインしていったのは、これまた高校生だ。
「芸大志望の同級生に頼んだんです」(鈴木さん)
インパクトたっぷりのポスターを、地域の学校や商店街、そして新大久保など都内各所のネパール人の集住地に撒き、それぞれがSNSで拡散もしていく。
こんな活動を続けていくうちにだんだんとフェスは大きくなっていった。ついには、これを機に友好を深めるべく、ネパール大使が板橋区長を表敬訪問するという出来事にまで発展。
それだけに苦労も増えたようで、間中さんはこう苦笑する。
「多文化共生ってこんなに難しいのかと思いましたよ」
だが鈴木さんには大いに刺激になったのか、
「ケーシーさんたちネパール人と会って話すたびに、ひとりひとりに文化があるんだなって感じて。外国人の見方が変わりました」
と言う。
板橋区も年々、外国人が増えている。人口57万4768人のうち、いまでは3万3390人が外国籍だ(2024年4月現在)。
従来から多かった中国、韓国に加えて、ネパールとベトナムの伸びが著しい。新参の人々は留学生や会社員、その家族が中心だが、外国人の増加に伴いトラブルも目立つようになってきた。
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