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ラピダスの前途が手放しには「楽観」できない事情 日本の半導体産業に巡ってきたラストチャンス

東洋経済オンライン / 2024年5月7日 11時0分

ここで出資8社について少し考えてみましょう。いずれの会社もラピダスが国(経産省)の肝いりで発足し、手厚い資金援助を受けられるという好条件が根底にあることが出資の前提になっているでしょう。

その上で各社の思惑を推し量ると、NTT、トヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、NECの5社はあくまで最先端半導体のユーザーとしての立場で、自社のビジネス展開・発展に必要不可欠になる先端半導体の開発・生産先を確保し、優先的に供給してほしいとの思いが働いているでしょう。

もっとも、ユーザーとサプライヤーという、ある意味で矛盾する立場に立つのはおかしい感じもしますが、これらの会社は最終的にはユーザーとしての立場を優先するでしょう。

各社について少し具体的にいえば、NTTは同社のIWON(アイオン)構想、すなわち最先端の光技術を使った低遅延・高速通信のネットワーク構想を実現し、自動運転などを可能にするため、先端半導体を含む光電融合技術の実現を考えているでしょう。

トヨタ自動車とデンソーはEV(電気自動車)の高度化や自動運転車の実現、ソニーは今後のイメージセンサーがらみの高度システムや新たな分野としての自動運転車、NECはこれからのAI(人工知能)開発などが主なターゲットになるでしょう。ソフトバンクと三菱UFJは新しい有望な投資先と見ているのではないでしょうか。

参加の"真意"を測りかねる企業も

不思議なのは、NANDフラッシュに特化しているキオクシアの参加です。ラピダスは先端ロジックを対象としているのでキオクシアの参加は奇異な感じもしますが、キオクシアが出資を決めたのはEUV(さらに高NA‐EUV)露光技術をメインとする、新たなプロセス・装置技術のマスターや新たな3D実装関連技術への期待ではないかと筆者は見ています。

キオクシアの参加以上に不思議なのは、ルネサスの不参加です。

ルネサスは先端ロジックに進出せず、これからも枯れた技術だけで行こうとしているのか、あるいは穿った見方をすれば、過去に経験したトレセンティテクノロジーズ(日本のファウンドリー会社)の失敗の当事者としてのトラウマがあるのか、とも考えられなくもありませんが、これはあくまでも筆者の個人的な感想に過ぎません。

ラピダスによれば、今回の第1棟(IIM‐1)に加え、将来同じ場所に第2棟の建設も考えていて、最終的に計画を遂行するには約5兆円の投資が必要になるとのことです。

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