「下方修正ラッシュ」抜け出せぬアステラスの焦り 強気目標を対外発信し続ける姿勢に疑問の声
東洋経済オンライン / 2024年5月7日 10時30分
「株式市場の皆様の期待に応えられなかったことを、経営陣として非常に重く受けとめております」
【図表で見る】下方修正はもはや恒例行事?アステラスの利益は4年連続で期初予想を大幅に下回る
国内製薬大手のアステラス製薬が4月25日に開いた、2024年3月期の通期決算説明会。日頃、はっきりとした強気な物言いで知られる岡村直樹社長CEO(最高経営責任者)は、いつになく神妙な面持ちで反省の弁を述べた。
それもそのはず、アステラスはこの1年で4回も通期業績予想の下方修正を行い、純利益は期初に見込んだ数字を9割以上も下回る結果となったからだ。
“恒例行事”と化した下方修正
ちょうど1年前、アステラスは2024年3月期(国際会計基準)について、売上高1兆5200億円(前期比0.1%増)、営業利益2880億円(同116.5%増)、純利益2270億円(同130%増)とする業績予想を公表した。
ところがその後、四半期決算の発表シーズンが来るたびに予想を下方修正。結果として、増収こそ維持したものの、営業利益は255億円(同80.8%減)、純利益は170億円(同82.7%減)と、2期連続の減益で着地した。2000億円台の営業利益をコンスタントに稼いでいた2010年代後半と比べ、収益力は落ち込んでいる。
減益となった最大の要因は、昨年買収したアメリカ子会社の無形資産の償却費を約600億円計上したことだ。ほかにも、新薬の販売が計画を下回ったことや、開発を進めている新薬候補の無形資産の減損損失を約400億円計上したことなどが痛手となった。
実はアステラスでは2021年3月期以降、4年連続で期初に掲げた業績予想を大幅に下回る事態が相次いできた。近年の同社にとって、下方修正はもはや“恒例行事”と言っても過言ではない。
度重なる下方修正を受け、株価もふるわない。昨年4月に2000円台を推移していた株価は、足元では1500円前後。この1年で約25%下落している。
UBS証券の春田かすみアナリストは「予想が強気すぎて、市場からの信用を失っていた。精度の高い業績予想を出すことが株式市場から問われている」と指摘する。
なぜアステラスは、強気の予想を掲げてきたのか。岡村CEOは決算説明会の中で「(業績予想が)意欲的でないと、組織がだんだんやらなくなっていく」と発言した。高い予想を設定することで、現場の士気を高める意図があったようだ。
しかしこの経営陣の狙いとは裏腹に、社内からは疑問の声が上がる。「社内向けに野心的な目標を掲げるならわかるが、なぜ社外に大風呂敷を広げるのかがわからない。そのせいで、市場からも信用されなくなっている」(アステラス社員)。
迫り来る屋台骨の特許切れに焦り
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