「下方修正ラッシュ」抜け出せぬアステラスの焦り 強気目標を対外発信し続ける姿勢に疑問の声
東洋経済オンライン / 2024年5月7日 10時30分
アステラスは後継薬候補を確保すべく、前述のアイザーヴェイを開発するベンチャー以外にも、積極的なM&Aや提携を続けてきた。2020年には、約3200億円を投じて遺伝子治療薬の開発企業を買収。しかし、その際に計上した無形資産などの減損も、この数年の下方修正の原因となってきた。
2024年3月期決算では、開発中の遺伝子治療薬に関する無形資産の減損を約400億円計上したことも響いた。遺伝子治療薬では複数の開発品目があるが、開発の中断や遅延を受けて、2021年3月期と2022年3月期には計約900億円の減損を計上している。
度重なる下方修正を受け、アステラスは今2025年3月期決算から、業績予想の立て方を大きく見直したという。
決算説明会で岡村CEOは、「さまざまなシナリオ分析を行い、リスクと機会を勘案して、意欲的でありながら達成可能性にも従来以上に配慮した、よりバランスのとれた計画を策定した」と説明した。
2025年3月期は、売上高1兆6500億円(前年同期比2.8%増)、営業利益は480億円(同88.2%増)と増収増益の予想だ。ここには無形資産の減損リスクまで織り込み済みだという。一般的には、減損の兆候が見られた際に計画に織り込むものだが、同社は現時点で減損の兆候はないとしている。
1年前に就任した岡村CEOは、イクスタンジ以外の開発品の成長や、コア営業利益率30%以上といった目標を掲げた2025年3月期までの中期経営計画の策定に、当時CFO(最高財務責任者)として携わっていた。その中計での成果目標についても、「達成は難しい」との認識を示した。
強気の予想を掲げることは、はたして効果があったのか。次の中計策定時には、検証が必要だろう。
兵頭 輝夏:東洋経済 記者
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