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「仕方のない赤字」があるという、大いなる勘違い 日立もかつては黒字に頓着しない体質だった

東洋経済オンライン / 2024年5月8日 9時30分

案の定というか、その後燃料費が上がり始めるとたちまち赤字を垂れ流す状況に陥ってしまいました。利益を上げるどころか、発電施設の建設への投資を回収することすらできなかったのです。

土木工事「禁止」

私は新たな組織である電力BUのCEOと議論し、すぐに撤退を決めました。もちろん、契約がありますから、撤退を決めたからといってすぐに事業を終結させられるわけではありません。その代わりに、個別のプロジェクトごとに、ビジネス環境の変化を先方に説明し、契約内容を変更していただく交渉を進めました。こういうとき大事なのは、だめなら「はいそうですか」ではなく、少しでもロスコストが削減できないか、泥臭く模索することです。

売電ビジネスからの撤退と併せて、土木工事付きのプロジェクトの一括受注も禁止しました。各BUが受注している土木工事付きのプロジェクトの実態を精査したところ、どれもこれもことごとく赤字であることが判明したからです。これも即決です。

日立は110年の歴史がありますが、出発点は工場文化です。根本には「いい製品を作れば売れる」という考えがあります。エンジニアはモノ作りをしたい。それはすばらしいことです。熱意も尊い。しかし、いいものをつくれば売れるはず、というのでは話が違います。

契約を節目節目で見直す、最悪の場合を想定して撤退条件を入れる、などのビジネスとして成立させるというマインドに欠けていたように私は思います。赤字であっても「環境問題に貢献しているのだから」「社会に貢献しているのだから」と逃げ道を作ってはいなかったでしょうか。

「赤字は悪」というマインドがないのは危険です。稼がないとだめです。利益が出なければ、社会に貢献するための事業を展開する次の投資ができません。7873億円の赤字の遠因には、そうした体質があったのだと思います。

数字はドリルダウンする

何かのプロジェクトのリーダーであれば、皆さん、日々、さまざまな報告を受けることと思います。ただ、数字も単に眺めていたのではだめだと思います。ブレイクダウン、ドリルダウンする。小さく細かくしていくと原因が見抜けることが多くあります。

「情報・通信系事業のあるプロジェクトの利益率は3%です」と報告されたとします。最終目標を8%にしていたわけですから問題があることは誰にでもわかりますね。ですが、現場を知らないと、どこに問題があるのかまではわかりません。

そういうときは、契約に問題があるか、システム開発の人員の配置に問題があるかのどちらかです。

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