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「仕方のない赤字」があるという、大いなる勘違い 日立もかつては黒字に頓着しない体質だった

東洋経済オンライン / 2024年5月8日 9時30分

情報・通信系の事業の中心はシステム開発で、システム開発の原価の中心はエンジニアの人件費です。したがって、利益が上がらない原因は、契約の際の見通しが甘かったりお客さまとの仕様の合意に齟齬があったりして開発が遅延し、コストがかかりすぎているか、あるいは、社内の人員配置や社外パートナーとの連携が悪くて、うまく開発が進まずにコストがかかってしまったか、どちらかの場合が多いのです。そこで、契約や開発にポイントを絞って聞くと、問題点はすぐクリアになります。

プロジェクトリーダーに求められる資質は、プロジェクトをお客さまと会社の双方にとって価値のあるビジネスとして成立させることです。人は、ともすれば争いごとを避け、相手から褒められたいと願うものです。けれども、コストアップに伴う契約の見直しなど、ときには言いにくいことであっても、臆せず申し出なければいけません。

「先憂後楽」でトラブル回避

肝心なのは、問題を認識しながら先送りにしないことです。早い段階であれば、傷も浅くて済むのですから、問題があるなら早期にお客さまや社内の幹部に伝え、判断を仰ぐべきです。

先憂後楽です。誰だってお客さまとけんかしたくない。初期の段階だったらいくらでも火を消せるのに「言いづらい」。自分が言えないなら上に言えばいいのに「自分で解決する」。結果大変なことになってしまう。

A社に何かのシステムを構築して納入するプロジェクトがあるとしましょう。この場合、すでにあるパッケージをA社仕様にカスタマイズして提供するか、システムを一から設計して提供するか、2通りあります。当然、パッケージ活用のほうが安い。しかし、パッケージの活用にはリスクもあります。たとえば、プロジェクトが進むにつれ、カスタマイズするだけではお客さまの要望に応えられないと判明した場合です。

このとき「せっかく受注させていただいたので、御社向けにシステムを一から作り直します」となるのが最悪のパターンです。受注額はパッケージ活用を前提にした価格のままですから、大赤字です。

ではどうすべきか。パッケージ活用を前提としていても、お客さまの要求を満たすシステムの仕様が確定するまでは、変更があるリスクを考慮して、価格が調整できる契約にしておくのです。「価格調整の項目を契約に入れておきたい」なんて、言いにくいことですね。しかし、お客さまに対してその条件やリスクについて説明を尽くし、合意し、きちんと契約に盛り込んでおけば、あとで大けがをすることはありません。問題が早く顕在化し、お客さまにとっても最終的によい結果となります。

東原 敏昭:日立製作所会長

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