金融庁が注視、「企業型DC」の商品は加入者本位か 仕組み債、外貨保険に続くモニタリングの焦点
東洋経済オンライン / 2024年5月8日 8時40分
例えば、信託報酬が抑制傾向にあるパッシブ運用型の投信であっても、選定されているほとんどが0.7~0.8%台の割高な商品というケースがあった。ほかにも、手頃に分散投資を行えるバランス型投信がすべてアクティブ運用のために、信託報酬が高めに設定されていた事例もあった。
その要因として挙げられるのが、商品ラインナップの見直しが進んでいないことだ。企業型DCは制度発足から22年が経過しているが、信託報酬が高かったかつての投信がそのまま選定されているケースが珍しくない。
2018年の制度改正により、加入者の3分の2の同意が得られれば選定している金融商品を除外(現金化)できるようになっている。ただ企業年金連合会の実態調査(2021年度)によると、この年度に除外を行ったDC導入企業の割合はわずか3.1%だった。
信託報酬が安価な投信を新たに追加しても、現状は割高な投信と併存している。商品を乗り換えない限り、割高な信託報酬の投信を持ち続けることになってしまう。
専用商品に固執する「本音」と「歪み」
企業型DCでは、運用会社が「DC専用商品」として組成している投信から選定することが一般的だ。
ある運営管理機関の幹部は、「運管が今もDC専用商品ばかりを並べる裏には、企業型DCの信託報酬を壊したくない意図もある」と打ち明ける。それどころか、導入企業から「加入者の利益を損なうような投信をラインナップに加えてほしいと要請されることもある」と話す。
取引のある大手金融機関が導入企業に対して「当社の運用子会社のDC専用商品を扱ってほしい」と持ち掛けることで、「割高な信託報酬や運用成績が乏しい投信が選定商品に含まれるケースもある」ようだ。
割高な信託報酬の投信が選定される背景として、企業型DCのビジネスモデルが抱える「歪み」も指摘されている。
運営管理機関の収益は導入企業から得る「運営管理手数料」だが、運営管理機関の幹部などによれば「運管業務をペイできるほど十分な手数料を得ているわけではない」。つまり投信の販売会社(商品提供機関)として得られる信託報酬で事務コストの赤字を補填しようとするインセンティブが働くわけだ。
だが、そのシワ寄せは当然にして加入者にいく。金融庁は「まずは運営管理機関の収益構造や運営実態を把握し、ビジネスモデルの歪みによって加入者の利益が損なわれていないかを分析したい」(幹部)としており、業界共通の重要課題を分析してから個別の監督を行う構えだ。
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