金融庁が注視、「企業型DC」の商品は加入者本位か 仕組み債、外貨保険に続くモニタリングの焦点
東洋経済オンライン / 2024年5月8日 8時40分
ほかにも、「金融グループの取引関係による商品ラインナップの偏りなどを把握したい」意向で、いわゆる「系列」の問題なども重要なモニタリング項目に上がるとみられる。
過去のモニタリングでは問題が表面化
金融庁による資産運用業へのモニタリングでは、さまざまな問題があぶり出されてきた。
仕組み債のモニタリングでは、千葉銀行、武蔵野銀行、ちばぎん証券の3社に業務改善命令を発出。処分前から業界として仕組み債の販売を控えたことで、地銀の証券子会社27社のうち10社が2023年3月期決算で赤字に陥った。
外貨建て一時払い保険のモニタリングでも、地銀などで販売自粛や勧誘を見合わせたり、外貨建て保険に重きを置いてきた業績評価体系を見直したりといった動きが相次いでいる。
次にモニタリングのリソースを割くことになる企業型DCをめぐっても、業界の行動変容につながる問題が指摘される可能性が高い。加えて、運営管理機関を変更すると記録関連業務を担うレコードキーパーも変わり、過去の取引データを引き継げなくなってしまうために「導入企業が運管を変更できない」といった課題などにも目が向けられる可能性がある。
もっとも、金融庁のモニタリングを待たずして、自主的な変革の動きも出始めている。
グループ内の70社、約9.8万人が加入する日立グループの企業型DCは、2019年4月に選定商品を抜本的に見直した。加入者の利益や理解のしやすさなどを踏まえて、それまで18本あった商品数を9本に絞った。選定された投信8本はいずれも低廉な信託報酬だ。
特筆すべきは、それまで8本だった元本確保型商品が1本だけになったこと。資産運用立国実現プランでは、加入者の運用について「インフレリスクを十分考慮する必要があるが、現状では元本確保型のみで運用している加入者が約3割」に上ることが指摘されている。
その要因の1つと考えられるのが、元本確保型が商品ラインナップの多くを占めることで、無意識に比重を置いてしまう心理的な影響だ。実際、日立によれば、元本確保型を1本に絞ったところ、新規DC加入者においてそれまで2~3割だった投信のみでの運用比率が6割強に増えているという。
価格破壊の波は企業型DCにも
信託報酬の価格破壊の波も企業型DCに及び始めている。
類似した商品性であっても設定時期によって信託報酬が大きく異なる「一物多価」が問題視される中、三菱UFJアセットマネジメントは2023年5月から8月にかけて、過去に設定したDC専用パッシブ商品の信託報酬を主要ファンド並みに引き下げた。
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