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財務省の信用を失墜させかねない「一枚の資料」 これこそが「日本経済凋落」を招いた真因だ

東洋経済オンライン / 2024年5月9日 10時0分

したがって、政府債務の増大が成長につながっていないことを示したところで、積極財政論者への反論になるはずもないのである。

「政府債務」の規模は直接操作できない

そもそも、政府は、財政支出の規模を直接操作することはできるが、政府債務の規模は直接操作できない。なぜなら、財政赤字の規模は税収次第であり、税収はGDPに依存するが、GDPは政府が政策によってコントロールできない要因によって変動する。したがって、政府が政府債務の程度を直接操作することはできない。

ちなみに、政府は、税収も直接操作できない。「税収=GDP×税率」であるから、税収もGDPに依存する。政府が直接操作できるのは「税率」である。

基本的には、政府が直接操作できるものが政策手段となる。だから、財政運営は、政府債務ではなく、政府支出の規模や税率を操作するのだ。そんなことは、財務省自身が最もよくわかっているはずであろう。

したがって、「積極的な財政運営が持続的な成長にはつながっていない面もある」ことを示したければ、政府債務ではなく、政府支出と成長の関係について示すべきだったのである。

だが、財務省は、そうしなかった。なぜか? その理由は、後ほど明らかにする。

さらに驚くべきは、「先進国の債務残高(対GDP比)と実質経済成長率の関係性を見ると、必ずしも正の相関関係は見られない」という記述である。

信じがたいことに、財務省は、「債務残高」ではなく、「債務残高/GDP」と実質GDP成長率の相関関係を見ているのだ。

そんな相関関係を見ることに、いったい、何の意味があるというのか。

もはや言うもバカバカしいのだが、債務残高をGDPで割った値は、GDPが大きくなれば小さくなるに決まっているではないか。

ところで、なぜ財務省は、「債務残高/GDP」ではなく、素直に「債務残高」と経済成長率の相関関係を示さなかったのだろうか。

それは、経済評論家の三橋貴明氏が明らかにしている。彼はブログで、OECD諸国の政府債務残高と実質経済成長率の間には正の相関関係があるという、財務省にとってはまことに不都合なデータを示したのである。

もっとも、先ほど述べたように、重要なのは、政府債務ではなく、政府支出の規模と経済成長との関係である。

これについては、すでに朴勝俊・関西学院大学教授による論文がある。その中で朴教授は、OECD各国の政府支出の伸び率と名目・実質GDP成長率の間に強い相関関係があることを示したばかりではなく、政府支出から名目GDPへの因果性の検討まで行っている。

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