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華厳滝で投身、明治期の学生の絶筆が与えた衝撃 絶筆「巌頭之感」は今も絵葉書で売られている

東洋経済オンライン / 2024年5月11日 11時10分

華厳滝付近の石にあの絶筆を刻んだもので、藤村の叔父で歴史学者の那珂通世が主導して1909年に建てたと伝わる。碑を製造する段階では現物のミズナラはとうに伐採されていたので、絵はがきと同じ写真をベースに彫ったとみるのが自然だろう。いわば現在に残るレプリカのひとつだが、現在流通している写真よりもずっと古い。

社会学者のデイビット・フィリップスが、マスメディアの自殺報道が自殺を誘発する現象に「ウェルテル効果」と名付けたのは1974年。それから数十年かけて日本にも警戒感がじわじわと浸透していった。

いまの世の中は第2第3の「巌頭之感」を生まないだろう。オリジナルの「巌頭之感」も新たなグッズが作られず、販路も細くなっている。時代に許された頃の資産を引き継いでいるに過ぎない状態だ。これからさらに60年後に同じように市井に残っている姿は……なかなか想像しづらい。

「巌頭之感」のレプリカはそうした危うい位置に立っている。けれど公に存在しているなら、腫れ物とせずに堂々と鑑賞してよいと思う。それが許容されるうちに。

※参考文献
猪股忠著『追跡 藤村操 日光投瀑死事件』(V2ソリューション)
島原学著『日本写真史(上)(下)』(中公新書)

古田 雄介:フリーランスライター

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