JR東日本が変えた「ジャカルタ通勤鉄道」の10年 初代現地出向者に聞く海外鉄道ビジネスの現場
東洋経済オンライン / 2024年5月11日 6時30分
その前提としてあるのは、日本から来た中古車だということと、日本で高い品質をたたき出していたという事実だ。こうすればこんなによくなるということはデータとして示せる。ブレーキシューの例でいうと、確かに中国製は2000円くらいだ。しかし、まだ分厚いのに割れることがある。割れるということは、走っている途中に脱落して脱線の可能性もある。極端にいえば、3日や4日でそうなることもあった。安くてもこれではどんどん取り替えなければならない。
それなら10カ月や12カ月取り替えなくても済むようなものを使ったほうが、ライフサイクルで考えると明らかに安い。だが、単品で考えるとやはり高くなる。日本から持ってくれば1つ1万2000円~1万3000円はする。そこをどう事実を伝えてあげるか、それをどういうふうにして購入してもらうか、その流れをつくったという言い方をするのが一番正しいかもしれない。
非純正部品が使われがちな事情とは?
――非純正の部品が採用されがちなのは、私はインドネシアの単年度決算が最大の障壁だと思います。結局値段の安いところに決まってしまい、鉄道に限らず、多くの日系企業が苦労されています。
インドネシアは平等性を保つため、別の言い方をすると汚職の撲滅のためにという言い方になるが、単年度で毎度競争入札を行っている。一方、鉄道の部品は納期が長く、今日発注したからといって明日来るわけではない。1年かかるような部品がたくさんあり、その年にほしいものを急に言われても準備できないということはある。だが、長い目で見れば大量発注などすれば値段は下がる。最初は正のスパイラルに入っていきづらかったが、今は比較的プラスになっている。向こうの方々にも信頼を得ていただいていると思っている。
――1両あたり何百点ものパーツで構成されている日本の車両がこれだけインドネシアで走っているというのは、鉄道会社やメーカーだけでなく、日本の中小企業にとっても非常に大きいマーケットです。
その通り。205系と他形式合わせて約1000両といえば、首都圏の民鉄1社くらいのボリュームがある。本来ならオペレーションなどを改善してもらって、もっとシームレスに走れるような状況になっていけばいいのだが、そんな感じだ。
――前田さんがインドネシアでの在任中に、ジュアンダ駅(KCIの駅の1つ)で205系同士の追突事故がありました。
その時、ちょうど真下(筆者注:ジュアンダ駅下のKCI本社オフィス)にいた。当時は着任してまだ半年くらいだったが、乗務員に聞き取りなどを行った。事故があっても担当のディレクターだけ異動させて処理してしまい、それで終わりというところがあった。ブレーキが利かなかったなどであれば我々にとっても不安だ。
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