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「覇気のない」演説から見えるプーチンの焦り ウクライナは逆に夏の反攻作戦準備に注力へ

東洋経済オンライン / 2024年5月14日 9時30分

侵攻開始から2年余り、プーチン氏はショイグ氏の解任をこれまで避けてきた。「特別軍事作戦」が思い通りに進んでいないことを国民に認めることになるからだ。しかし、一向に戦勝を達成できるメドが立たないことから、交代させざるをえなくなった。

ロシア軍はウクライナ東部や北東部で攻撃を続けており、チャシブヤールを含め、一部の要衝が今後、ロシア軍の手に渡る可能性は依然否定できない。

しかし、最近のロシア軍の攻勢には「戦術的に狙いが理解できない行動が多い」とウクライナの軍事筋が指摘する。プーチン氏からの厳命を実現しようと、実現可能性や軍事的効果を顧みずにしゃにむに攻撃しているという。

2024年初めから停止していたアメリカからの軍事支援がこの4月末から再開され徐々にウクライナに到着するのを前に、ロシア軍はウクライナ軍の戦力が整う前に戦果を挙げようと焦って攻撃を強めているからだ。しかし、結果的には攻撃を強めることで、逆に兵力の不足が露呈する皮肉な結果になっている。

こうした情勢について、この軍事筋は「第2次世界大戦当時のスターリングラード攻防戦でのドイツ軍に似てきた」と指摘する。「スターリングラード攻防戦」とは1942年夏から1943年初めまで続いた史上最大の市街戦だ。

一時は完全にスターリングラードを包囲したドイツ軍だったが、その後ソ連軍に逆に包囲された。ドイツ軍の現地司令官は「包囲打開は無理」と撤退を図ったが、ヒトラーが死守を命じたため、抗戦を続けた。

その挙句、現地司令官がヒトラーの命令に反して降伏した。この戦いを契機に大戦の戦局がソ連軍優位に転換した。つまり軍事作戦面で素人であるヒトラーの命令を順守しようとして、結果的に無残な敗北を喫したドイツ軍の行動に今のロシア軍の攻勢が似てきているという指摘だ。

ウクライナの「引き」の戦術が奏功

ロシア軍の攻勢がなかなか結果につながらないもう一つの要因は、ウクライナ軍の意図的で自発的な撤退戦略だ。弾薬がロシア軍に比べ大幅に不足している現状の中で、シルスキー軍総司令官が採用している守りの戦略のことだ。

撤退することでロシア軍との激戦をできるだけ回避し、自軍の主力兵力を温存する一方で、ロシア軍の戦線を間延びさせて兵力を消耗させ、補給上の負担も重くさせる作戦だ。

ウクライナ軍事筋は「これまで東部でウクライナ軍はロシア軍の攻勢に対し、守りに徹しているが、守備ラインは一度も完全に崩されたことはない」と強調する。

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