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あおぞら銀と大和証券G、「土壇場提携」の真意 提携劇が浮き彫りにするあおぞら銀の経営課題

東洋経済オンライン / 2024年5月15日 7時20分

複数の関係者によれば、旧村上ファンド系の念頭には、SBIHD傘下のSBI新生銀行との統合があった。SBIHD会長兼社長の北尾吉孝氏に対して保有株の売却を持ちかける場面もあったという。北尾氏は「興味がないと言えば噓になる。買収先として内外の金融機関を見ているが、あおぞらはワンオブゼム」の構えだった。

現時点では不透明な提携効果

あおぞら銀行の大見社長は「(旧村上ファンド系の動きは)資本提携とはまったく関係がない」と強調するが、背中を押したことは確かだろう。この頃のあおぞら銀行は、同じ銀行ではなく他業種をパートナーとして見据え、銀行と証券の連携が見込める大和証券グループに対して正式に資本提携を申し入れた。結果的に大和が「ホワイトナイト」となった形だ。

赤字転落やアクティビストの襲来を経て、土壇場で結ばれた資本業務提携。あおぞら銀行と大和証券グループは富裕層ビジネスや不動産、M&Aなどでの協業を掲げるものの、詳細はこれから両社で立ち上げる委員会で詰める。提携がもたらす利益も「現場を踏まえた数字は出していない」(大見社長)と話す。

提携発表の翌14日の株価は対照的だった。あおぞら銀行の株価は上昇で始まった反面、500億円超を出資した大和証券グループは下落した。あおぞら銀行の財務を救っただけで、両社の相乗効果が空手形に終わらないか、市場は厳しい視線を注いでいる。

今回の提携劇は、あおぞら銀行の古くて新しい課題を改めて浮き彫りにした。同行はメガバンクのような規模や人員も、地銀のような営業基盤も持たない。そのため、仕組み金融や外国証券運用、プライベート・エクイティー投資といったハイリスク・ハイリターンな分野に収益機会を見出さざるをえない。

こうした事業は高いリターンと引き換えに、金利環境や金融システムが変調を来せばたちまち大きな損失をもたらす。アメリカ商業用不動産向け融資の貸倒引当金や有価証券の損失処理は、その典型例だ。

リスク管理の強化が喫緊の課題

増資によって、あおぞら銀行の自己資本比率は3月末時点の9.23%から10%台に回復する。とはいえ、あおぞら銀行のように海外ビジネスを積極的に行う銀行は、本来であれば現地法人ではなく海外支店を構え、より厳格な国際基準を適用すべきだろう。CET1比率(普通株式等Tier1比率)は増資後でも8%強までしか高まらない公算で、10%を超えるメガバンクや大手地銀とは対照的だ。財務体質は依然として盤石ではない。

「リスク管理をさらに強化しないといけない」。大見社長は前期の赤字決算をこう振り返る。収益機会を深追いするあまり、再び他社からの増資を仰ぐ事態になれば「振り出し」に戻ってしまう。大和証券グループとの提携を奇貨とし、あおぞら銀行がビジネスの持続可能性を高められるかも焦点となる。

一井 純:東洋経済 記者

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