本来は白い「マーガリン」が黄色である驚きの理由 行動科学や心理学をマーケティングに役立てる
東洋経済オンライン / 2024年5月16日 10時40分
その後、風向きはふたたび変化する。行動科学や心理学をマーケティングに応用することのメリットは実に大きいので、長く放っておかれるわけがなかったのだ。着目すべき説得力ある理由は3つある。いずれもRで始まるキーワードだ。
第1のキーワードは、「レリヴァンス(Relevance)」、すなわち関連性だ。
行動科学と心理学以上に、セールスやマーケティングに関連のある学問は考えられない。企業ならどんな業種であれ、消費者を競合ブランドから乗り換えさせたり、高価格帯の商品を選ばせたり、シリーズ商品をいっそう手広く買わせたりしなければならないが、これらはいずれも消費者の行動を変えさせることを意味する。
ビジネスとは、行動変化を促す活動なのだ。だとすれば、行動変化を効果的に促すにはどうしたらいいか、それを教える130年分の研究を活用しない手はない。そこで行動科学の出番となる。
行動科学がマーケティングと関連しているのはチェスキンの研究を見ても明らかだ。
チェスキンは学術用語を抽象的に解説するのではなく、期待が味覚にも影響するという発見の具体的な応用方法を考えた。変えるべきはマーガリンの味ではない。色を変えれば売上が伸びるとアドバイスしている。
第2のキーワードは、「ロバストネス(Robustness)」。堅牢性、確実性だ。
マーケティングの理論は根拠のあやふやなものも少なくない。本能や勘をよりどころとしてしまうのだ。莫大な金額を左右する判断をするにあたって、これは理想的な基盤とは言いがたい。
その点で行動科学は違う。高名な専門家の意見というだけで通すことはない。必ず実験を経て証明する。きちんとした科学者がピアレビュー(査読)を受けて発表した研究だ。
つまり、発見を信頼すべき確固たる基盤があるというわけだ。
感覚転移のことを思い出してほしい。見た目が味に与える影響について、チェスキンは理屈だけで主張しなかった。比較実験をすることで、何が実際に味の評価に影響しているかを分析したのである。
マーガリンの実験は1940年代のものとしては実に見事なのだが、行動科学の堅牢性は、それ以降に大きく向上した。
たとえばチェスキンの研究にはピアレビューがなかったが、現代ではほぼすべての論文がきちんとほかの科学者による検証を受ける。期待が味覚にもたらす影響についても、その後にピアレビューを受けた論文が何本か発表されている。
2006年にテキサス大学オースティン校マコームズ・スクール・オブ・ビジネスの教授ラジ・ラグナサンが行った研究もその一つだ。
この記事に関連するニュース
-
自分は幸運と思えば幸運な結果を、不運と思えば不運な結果を招く【科学が証明!ストレス解消法】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月26日 9時26分
-
組み立てが大変なイケアの家具は満足度が高く、時短になる簡単ケーキミックスは売れなかった理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月23日 11時30分
-
「なぜか解約できない…」行動経済学の専門家がサブスクを継続してしまう巧妙な仕掛けを明かす
Finasee / 2024年7月9日 13時0分
-
コンビニと美容院…店舗数が多いのはどちら? “コンビニのほうが多そう”と思った人に起きている「思考プロセス」
Finasee / 2024年7月8日 13時0分
-
ハーバードの大学生が「ポルノ」を大量に見る、深い理由【ハーバード・Googleの行動科学研究者が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月3日 18時30分
ランキング
-
1「再訪したい国」日本が世界首位 人気地域に人出集中する傾向
共同通信 / 2024年7月29日 16時51分
-
2夏は「食中毒」に要注意 下痢が出たときに市販薬を服用してもOK? 症状&対処法を消化器病専門医に聞く
オトナンサー / 2024年7月30日 7時10分
-
3日銀の利上げで今後の住宅ローン金利は上昇傾向へ、それでも「変動金利」が有利な理由
マイナビニュース / 2024年7月29日 6時30分
-
4扇風機の「電気代」は、エアコンと比べてどれだけ安いんですか?【家電のプロが解説】
オールアバウト / 2024年7月29日 20時15分
-
5ホンダの「高級ミニバン」2年ぶりに復活! 豪華デザイン採用の「“新”オデッセイ」一体どんな人が買っている?
くるまのニュース / 2024年7月29日 20時10分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)