企業にとって「利益の追求」だけが美徳なのか? 企業と世界の関係という歴史から得られる教訓
東洋経済オンライン / 2024年5月17日 10時20分
エクソンは気候変動対策の規制を阻止することで、自社の利益を改善したが、そのせいで社会は長期的な環境破壊という損害をこうむった。
コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)は次々とレバレッジド・バイアウト(LBO)を仕かけ、莫大な富を手に入れたが、その大半は納税額を減らすための金融工学と、人件費を減らすコスト削減によってもたらされたものだった。
利益の追求を金科玉条とするのは単に誤っているだけではない。危険でもある。なぜなら、重役陣や経営陣にアイデアよりも数字を重んじるいびつな考え方をさせることになるからだ。
利益だけを追求することは美徳ではない
ほかのことをすべて排して、もっぱら利益ばかりを重視すれば、自分たちが社会にどういう害を与えているかに目が向きにくくなる。頭が利益のことでいっぱいになり、社会をよくするためにどういう貢献ができるかについて、広い視野から考えることができなくなる。
また、独善的な態度も生む。自社が前年黒字だったことを喜ぶのと、自社が世の中のためにできる最善のことは、徹底的に利益の増大に努めることだと考えるのとは違う。利益自体を目的として追求し、もっと大きな善を実現するための手段と考えないのは、ひとことでいえば、強欲ということだ。
しかし最近は、単純化された資本主義の見方が広く浸透し、それが美徳と見なされている。このような考え方は社会にも、資本主義の営みにも実害をもたらさずにおかない。
経営陣が従業員の10倍とか20倍、あるいは100倍の給料をもらっていたら、従業員の心には当然、会社は自分たちを正当に評価しているのかという疑念が生まれるだろう。労働者の意欲が削がれれば、生産性は低下する。たとえ意欲が削がれなくても、疎外や社内の分断は放置しておいていいものではない。
近年、企業の目的は何か、社会的な目標を考慮に入れることはできるか、取締役はもっぱら利益の最大化をめざすべきかといったことが延々と論じられているが、歴史的に企業を掘り下げてみると、企業のほんとうの存在理由、企業が創設されたほんとうの目的が見えてくる。それは国の共通善を促進するということだ。
企業はもともと国の目標を追求するために作られた。その目標の中には、もちろん、商業の拡大も含まれたが、それがすべてではなく、探査や、植民や、布教といったことも含まれた。
もし誰かが17世紀の英国の議員に、ミルトン・フリードマンが1970年に述べたように、企業の目的は「できるだけ多くのお金を稼ぐこと」だといったら、あきれられただろう。
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