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企業にとって「利益の追求」だけが美徳なのか? 企業と世界の関係という歴史から得られる教訓

東洋経済オンライン / 2024年5月17日 10時20分

当時は誰でも、企業が国益と密接に結びついていることを知っていた。国王は理由があってジョイント・ストック・カンパニーに特許状を与えたのであり、それは単にフィルポット通りの一握りの商人を儲けさせるためではなかった。

歴史から得られる具体的な教訓

ところが、その後、アダム・スミスから現代までのどこかで、企業と共通善との結びつきがぼやけてしまった。今日、企業が共通善を考慮しなくてはならないということは、もはや自明ではない。それどころか、大きな議論を呼ぶこととすら思われている。

本書では、公的な目的を持った公的な事業体としての企業が、利益追求マシンとしての企業へと変わっていく過程をたどった。世界が企業とともに歩んできた歴史からはもっと具体的な教訓も得られる。

本書で取り上げた企業はいずれも――古代ローマのソキエタス・プブリカノルムから東インド会社やフォード・モーター・カンパニーまで――産業の形態になんらかの新機軸をもたらしている。ある企業は有限責任の先駆となり、ある企業は株式会社の先駆となり、またある企業は大量生産の先駆となった。

しかしひとたびそれらのイノベーションによって支配が確立されると、必ず、腐敗と濫用が起こった。その後、社会がその濫用をいやというほど味わったところで、状況を是正するための法律や政策が練られた。

古代ローマでは、皇帝アウグストゥスのもとで、ソキエタスに依存していた徴税請負制度が廃止され、代わりに中央政府が税を直接徴収する仕組みが導入された。
金ぴか時代の米国では、独占企業と化した鉄道会社の横暴な振る舞いを取り締まるためシャーマン反トラスト法が制定された。

ニューディール政策を掲げたフランクリン・D・ローズベルトは、労働法を施行して、非人間的な労働環境を生み出した大量生産と組み立てラインから労働者を守った。

会社の未来像を描き直す

このようなイノベーション、搾取、改革という一連の経過は、企業の歴史において、何度も何度も繰り返された。企業の進化の歴史を振り返るとき、浮かび上がってくるのは、現在の企業の基盤がいかにそのような歴史上の出来事を土台にしているかということだ。

現在、企業の力は絶大だ。わたしたちが毎日をどう過ごすかから、何を気にかけ、何に価値を置くかまで、わたしたちの生活のありとあらゆる側面が企業の決定に左右される。しかし、本来の目的を見失った企業は、社会に大きな害を及ぼす可能性がある。

規制の導入までには時間がかかるので、それまでのあいだに社会が多大な代償を支払わされるということも起こりうる。

共通善を促進する原動力として、会社の未来像を描き直したいというのが、わたしの考えだ。

(翻訳:黒輪篤嗣)

ウィリアム・マグヌソン:テキサスA&Mロースクール教授

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