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「リベラルアーツ」を軽視しすぎた日本社会の代償 「リーダーシップ」と「教養教育」の不可分な関係

東洋経済オンライン / 2024年5月17日 9時30分

ハーバード大学だけではなく、PPE(Philosophy、Politics and Economics)を重んじるオックスフォード大学なども同様の考え方だと思います。やはり、社会のリーダーになる人というのは、白黒つかない、非常に多方面の利益というものを考えるものだと。ホッブズの言葉を借りるならば、「社会全体の幸福の最大化」ということを考える人でなければならない。そのような人になるには、多方面にわたる教養が必要だという考えですね。

堀内:アメリカには、ハーバード大学のような総合大学とは別に、いわゆるリベラルアーツカレッジがありますね。私が懇意にしているグレン・フクシマさんがカリフォルニアのDeep Springs College、先日対談させていただいた斎藤幸平さんがコネチカットのWesleyan Universityといったリベラルアーツカレッジに進学していますが、アメリカには名門と言われるリベラルアーツカレッジがいくつもありますね。

また、アイビーリーグでは、新入生はとにかく寮に入らないといけない所が多い。寮があって、そこに寮監(りょうかん)がいて、チューターがいて、彼ら以外にもさまざまな人が寮にやって来て、毎晩議論をするといった活発な交流がおこなわれています。

山口:そうですね。まさにトーマス・マンの『魔の山』の世界ですよね。

堀内:その伝統はオックスフォード大学やケンブリッジ大学といったイギリスの大学から来ているのだと思いますが、オックスフォード大学では、39のカレッジ(学寮)があって、カレッジは必ず寮と一体になっています。そもそも大学に入学するためには、まずこうしたカレッジに入ることが必要になります。

日本とは異なる欧米エリートのキャリア形成

また、私がゴールドマン・サックスにいたときの経験をお話しすると、インベストメントバンカーには学歴の高い人が多いわけですが、実はアメリカの大学での専攻が歴史や哲学など、経済や経営はまったく勉強していませんという人が多くて驚いた記憶があります。

とにかく最初はリベラルアーツ的なものを学ぶ。そして、次のステージとして、金融で成功したいと思ったら、学部卒で数年働いてある程度の資金を貯めてから、ビジネススクールなどで学ぶ。そうして、20代の後半くらいで専門的・実務的な知識を身に付けたビジネスマンとして、その分野で階段を駆け上がっていく。キャリア形成はそんな感じになっていますね。

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