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気軽に「退職代行を使う人」が知らない残酷な現実 「便利」「ずるい」でなく、気になるのは「危うさ」

東洋経済オンライン / 2024年5月17日 21時30分

その他でも、「上司に言いづらい」「辞めさせてもらえない」「説得されるくだりが無駄」なども退職代行サービスを利用する理由。逆に上司や同僚としても、急に辞められることに対するネガティブな感情はあっても、「退職代行サービスを使ってもらうほうが気楽でいい」という人もいるようです。

しかし、入社から日が浅い人は、まだキャリアにつなげられるほどのスキルや経験を得られておらず、「転職のカードが少ない」という状態での就職活動を余儀なくされるのがつらいところ。また、自分が「入りたい」と思うような企業は新卒中心の採用で、「募集があるのは同じように誰かが早々に辞めた企業になりやすい」という現実があります。

“売り手市場”という言葉に惑わされず、自分の市場価値を冷静に見極められているか。退職代行サービスが手軽に使えるものだからこそ、退職の時期を選ぶ判断力や、それに向けた準備力が問われているのです。

世間は狭く同業種はつながっている

さらに問題なのは、「就職活動のときに退職代行サービスを利用したことが知られてしまう」というケースがあること。つまり、その後のキャリアに影響を及ぼすかもしれないのです。

これまでの取材経験上、人事担当者たちの中には「退職代行サービスの利用を快く思っていない」という人が少なくありませんでした。時間とお金をかけて採用し、先行投資する形で育成していたのですから、人事担当者がそう思ってしまうのは当然かもしれません。

また、「話を聞く余地なく辞めてしまう」ことを問題視しているうえに、社内で人事担当者の評価が下がったり、叱責されたりという事態が起こりうることも理由の1つでしょう。

「人事担当者には横のつながりがある」のは当事者間では知られた話ですし、特に同業種では「ネガティブな情報として共有されてしまう」というリスクを無視できません。どんなに売り手市場だとしても選ぶ権利は両者にあり、退職代行サービスを使って自分が相手との関係を絶った分、次の相手からも関係を絶たれやすくなってしまうところがあるのです。

企業側としては、退職代行サービスを使って辞める人が増えると、「退職者が増える→人手不足になる→労働環境が悪化する→ますます退職者が増える→ますます人手不足になる→ますます労働環境が悪化する」という悪いループにはまりかねないリスクがあるだけに、警戒されてしまうのは当然なのです。

「ブラック企業なら自業自得」というところもあるでしょうが、はたして本当に企業側だけが悪いのか。いずれにしても、退職のハードルが下がりすぎることは、「働きづらい企業が増え、世の中の活動が停滞してしまう」という危うさと紙一重なのです。

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