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気軽に「退職代行を使う人」が知らない残酷な現実 「便利」「ずるい」でなく、気になるのは「危うさ」

東洋経済オンライン / 2024年5月17日 21時30分

そしてもう1つ、忘れてはいけないのが、「辞め方によっては企業から損害賠償請求を受ける」というケースもあり得ること。その場合、退職代行サービスがすべて対応してくれるとは限らず、「自分で弁護士を探して依頼した」という話を聞いたことがあります。

もちろん退職代行サービスの利用自体は悪いことではなく、それだけで訴えられることはないでしょう。しかし、必要な引き継ぎなどを行わず、急に投げ出した結果、売り上げを大きく下げてしまった。重要な取引先を失ってしまった。企業や商品のブランドを傷つけてしまった。機密情報を持ち出したまま無断欠勤を続けたなど、実害が出たケースは要注意です。

逆に「退職代行サービスを利用したことで、企業から未払い給与や退職金をもらえなかった」というトラブルも聞いたことがあります。「これらの事態が起きたときに対応できる退職代行サービスなのか」「その場合、労働組合や弁護士のサポートは受けられるのか」は事前に確認しておいたほうがいいでしょう。また、「こじれた結果、しばらく退職できなかった」というケースもまれに起こりうるため、退職代行サービスを利用するとしても、やはり辞め方は大事なのです。

辞める側と辞められる側は紙一重

最後に誤解なきよう書いておくと、退職代行サービスそのものに問題があるというわけではありません。むしろ、不適切な労働環境によって心身ともに追い込まれた人が「退職代行サービスで命を救われた」という話をいくつか聞きましたし、その社会的意義は明確です。

さらに、「ブラック企業への注意喚起を促す」「転職のハードルを下げられる」などの意味でも、ポジティブなサービスと言っていいでしょう。厚生労働省の調査では、大卒3年以内の離職率は32.3%(2020年)と「3人に1人は早期退職」する時代であり、今なおジワジワと増えている点も含め、時代に合うサービスであることに疑いの余地はないのです。

それでも退職代行サービスを利用する人に忘れてほしくないのは、「自分が上司や同僚と向き合わずに辞める立場なのか」、それとも「自分が上司や同僚の立場で『なぜ直接言ってくれなかったのか』と驚き、悲しみ、怒る立場になのか」は紙一重であること。組織で勤めていれば当然どちらの立場にもなりますし、もし起業しても誰かを雇用するときは「突然、第三者からの連絡のみで去られてしまう」という苦しみを味わうかもしれません。

そしてもう1つふれておきたいのは、「今、仕事で悩んでいる」「退職代行サービスを使わずに辞めた」という人について。

「今、仕事で悩んでいる」という人は、今回の「退職代行サービスの利用者が急増している」というニュースを聞いて、「自分は頑張れている」「何とか踏み留まっている自分は偉い」と自己肯定感を上げればいいのではないでしょうか。また、「退職代行サービスを使わずに辞めた」という人は、企業と担当者と向き合って対応できたことを自分の誇りにしてもいいでしょう。

退職代行サービスを使う人ばかりにならず、両者のような人が存在することが、社会にとって大事なのです。

木村 隆志:コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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