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息子を「世界一の富豪にする"実験"」の意外な効能 子供には「投資」ではなく「ビジネス」を教えよう

東洋経済オンライン / 2024年5月17日 10時0分

その意味でも、先ほどのガチャガチャのように、ビジネスを通じて経済の仕組みを理解することが重要になる。ビジネスを広げるために投資してもらおうという発想も生まれてくる。

「預金でお金を眠らせておくのはもったいないです。投資しましょう」

銀行などでよく聞く言葉だが、これは非常に無責任な発言だと思っている。

預かったお金を活用して融資を行うのが銀行の主な業務だ。預金者のせいでお金が「眠っている」わけではない。銀行に貸出先がないから、お金が「眠っている」のだ。

事実、都市銀行の預貸率(預金を貸出に回している割合)は過去20年でほぼ100%から約50%にまで大きく下がっている。世の中の資金需要が足りないから、投資商品を勧めて稼ごうとしている構図になっている。

資金需要がないのだから、受け皿となる投資先が国内にあるはずがない。資金需要のない日本の金利は当然低い(資金需要が強ければ、日銀はとっくに利上げしている)。結果的に資金が海外に流出し、現在の円安を招いている。これは、前回の記事(止まらぬ円安の「1200兆円の借金よりヤバい」現実)にも書いたとおりである。

お金を投資するか、若い時間を投資するか

小説『きみのお金は誰のため』の中でも、投資の実態を理解しない銀行員(七海)に、先生役のボスが苦言を呈しているシーンがある。

ボスは学習支援AIへの投資を例に、投資の真髄を語り始めた。

「彼らの会社には、僕や他の投資家が3億円を投資しているんや。投資に失敗してお金を損するのは僕ら投資家だけの話。その3億円は事業のために働いてくれた人たちに支払われていて、世の中のお金の量は減らへん。社会にとってお金は損失にはならんのや」

優斗は、ビリヤードの話を思い出した。

「払ったお金は必ず誰かが受け取っているんですよね」

(中略)

「投資の目的は、お金を増やすことだとばかり思っていました。そこまで社会のことを考えていませんでした。大切なのは、どんな社会にしたいのかってことなんですね」

苦笑いで恥ずかしさを隠す彼女に、ボスが優しく声をかける。

「そう思ってくれたんやったら、僕も話した甲斐があったわ。株価が上がるか下がるかをあてて喜んでいる間は、投資家としては三流や。それに、投資しているのはお金だけやない。さっきの二人は、もっと大事なものを投資しているんや」

ボスは七海と優斗を順に見つめてから、ゆっくりと続けた。

「それは、彼らの若い時間や」

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