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利益1位の三井物産、巨額減損の住友商事と明暗 5大総合商社の2023年度決算は業界序列が変動

東洋経済オンライン / 2024年5月17日 7時0分

ニッケルはステンレスや特殊鋼、リチウムイオン電池などに欠かせない金属だ。住商は原料炭や鉄鉱石の開発では三菱商事や三井物産の後塵を拝し、非鉄金属で実績を積み上げてきた。アンバトビーは住商にとって絶好のチャンス到来だった。

カナダの資源会社などと組み、2012年に操業を開始。しかし、設備の不具合が相次いだうえにニッケル市況も低迷し、2015年度に770億円の減損損失を計上。その後も2016年度48億円、2018年度100億円と減損の計上を繰り返してきた。

そのたびに住商は「設備の改修を終え、安定生産のメドをつけた」との説明を行ってきた。それでもコロナ禍で生産がストップした2020年度に850億円もの減損を計上した。

今回の全損処理によって撤退の可能性もみえてきた。だが、「足元ではプラントの不具合があり通常の生産体制に戻すことが急務」と上野社長が言ったように、プラントの操業を正常化しなければ事業売却も困難だ。

希少金属であるニッケル開発は日本の経済安全保障も絡む問題であるうえに、撤退となれば金融機関やマダガスカル政府との調整も必要になる。迅速な経営判断が何よりも求められることになる。

経営は脱「仲良しクラブ」で出直し

住商ではこれまで、「仲良しクラブ」と揶揄される経営体制の問題があった。重要な経営判断は、営業部門長を含む12人の幹部が参加する経営会議で、全会一致で下されていた。そのため、とくに事業撤退などの決断が遅れやすい傾向にあった。

しかし今後は、経営会議のメンバーを社長、コーポレート役員4人、営業部門長2人の計7人に絞る。意思決定も全会一致から多数決へと変えることにした。

前出の永野アナリストは、「前社長と同年齢の上野さんはさまざまな事業経験が豊富なうえ、経営会議の最年長でリーダーシップが発揮しやすくなった。経営会議が多数決になったことで、経営意思決定の迅速化も期待できる」と話す。

2024年度は5300億円と純利益の急回復を見込む。懸案の投資案件の処理に区切りをつけたことで、「成長の階段を駆け上がる」(上野社長)ことができるのか。

今年度も5大商社の動向に市場関係者の視線が注がれるだろう。

森 創一郎:東洋経済 記者

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