「飽和するコンビニ」に成長余地が残っているワケ 店舗数は微減となっているが、狙える次のニーズ
東洋経済オンライン / 2024年5月17日 11時40分
こうした構造の業界にとって店舗を増やすことが難しくなれば、今後の成長が鈍化することは避けられない。ただ、国内コンビニ市場がもう成長しない、ということではなく、これまでのビジネスモデルを転換せざるをえない、と解釈すべきであろう。ビジネスモデルの転換とは、ざっくり言えば、①商圏を細分化して出店余地を生み出す、②新たな需要を取り込む、といった2点ということになる。
「商圏の細分化」とは、店舗の損益分岐点を下げて、これまでは出店できなかった小さい商圏にきめ細かく出店していく、といったイメージである。コンビニに限らず、小売店では人手不足を見越した省人化、無人化に取り組んでいることは、よく知られていることだろう。
小売店舗における最大のコストは人件費であり、この削減は人手不足への対策であるとともに、店舗のコストを下げることで、損益分岐点を大きく引き下げることが可能になる。
これにより、従来は商圏規模が小さく出店できなかった場所への出店が可能になる。例えば、ビルイン型店舗をビルの各階に配置したり、中小工場、事業所、人口規模が少ない集落への出店を拡大したり、といったイメージだ。出店余地を再び拡大することが十分可能となる。
おにぎり、おでん、コーヒーに続いて…
「新たな需要の取り込み」に関しては、コンビニ各社は以前から積極的に取り組んできた。弁当、総菜、日用品から始まって、おにぎり、おでん、持ち帰りコーヒーなどの商品を開発してきたことは、ご存じのとおり。
また、来店動機の多様化が主目的ながら、公共料金、自治体サービス、複合機サービス、ATM、宅配便受付、各種チケット受取、といったサービスを提供することで、売り上げを積み上げてきた。
そして、今ではリテールメディアと言われる、さまざまな顧客接点を生かした店舗のメディア化も進行中であると聞いたことがあるかもしれない。各社とも宅配事業の強化を本格化しており、ラストワンマイルを超えて顧客に近づくという、超コンビニエンスの実現も目指しており、これも確実に新たな需要を開拓しつつある。
次に取り込むとすれば、隣接する巨大市場であるスーパーマーケット業界の需要を取り込むということになるだろう。
食を中心とした生活必需品の提供というニーズに対しては、スーパーが担っている役割は大きいのだが、これまではコンビニとスーパーは似て非なる業界として共存してきた。主に「即食」という時間を買うニーズに対応してきたコンビニが、スーパーが担っていた「内食」というニーズに対応できる環境が整ってきた。
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