「飽和するコンビニ」に成長余地が残っているワケ 店舗数は微減となっているが、狙える次のニーズ
東洋経済オンライン / 2024年5月17日 11時40分
人口減少・高齢化という社会構造変化を背景に、生活必需品の買い物需要が小商圏化しつつある、ということが背景である。人口が少なかったり、高齢化して遠くに出かけにくいといった理由でスーパー業態が成立しがたい場所が増えつつある中、そうした商圏で損益分岐点の低いコンビニが、スーパーのニーズにも対応するということだ。
北海道におけるコンビニの存在感の大きさ
実際に北海道におけるコンビニの存在感の大きさは、その先行事例として参考になるかもしれない。次の図表は、経済産業省の商業動態統計からコンビニ販売額と人口規模から地域別に一人あたり年間利用額を計算したものだ。北海道におけるコンビニ利用額は他の地域に比べてずば抜けて高いことが見て取れる。
この背景としては、人口密度が低く広がって居住している北海道においては、スーパーが少ない地域も多く、コンビニがその機能の一定部分を担っていると言われている。
また、冬季は遠くに買い物に行きにくいことも、近くにあるコンビニの利用度を高めているという事情もある。仮に、このような存在に本州以南のコンビニが進化して、北海道レベルまで利用度を上げることができたとすれば、コンビニ市場は2.8兆円拡張可能、そしてさらに1割アップすることができるなら、理論上は4.3兆円以上も市場拡大が可能なのである。
国内の買い物環境が、より小商圏化(遠くまで買い物に行けなくなるうえに、人口が減ってスーパーが成立しない地域が増える)という方向性に進んでいるのなら、コンビニの成長余地はここにもある、ということになる。
スーパーマーケットの内食ニーズを取りにいく
セブンイレブンは、2019年以降、「ワンフォーマットからの脱却」という方針を打ち出している。これは、個店の立地する商圏のニーズを詳細に把握して、すべてを取り込むことができることを目指して、きめ細かい対応を行っていく、という趣旨だ。その最大の対象ニーズといえば、スーパーマーケットが担ってきた地域の内食ニーズそのものを取りにいく、ということだろう。
少し前、話題になった、「SIPストア」という生鮮や日配品の品揃えを強化した実験店舗は、まさにこの方向性を目指した新たなフォーマット開発である。1号店は大都市郊外の住宅地における実験だったが、この成功をもって多店舗展開をするものではないことも表明されている。
これこそ、全国各地のさまざまなニーズに合わせて多様なフォーマットとして開発し、分散展開するという趣旨だと解する。経済産業省の商業動態統計によれば、飲食料品小売業販売額(食品を主として販売する小売業)だけでも48兆円あり、コンビニはこれを取り込むことで再成長ステージに立つことを目論んでいるのである。
今年の1月、イオングループの中四国地方のスーパーを統合したフジの経営方針発表会における岡田元也会長の発言が注目された。「今後の競合の大本命はコンビニとEC」「コンビニと共存できなくなる時代になり」という言葉の背景は、内食攻略を目論むコンビニを迎え撃つ、というスーパー最大手イオンの意思表示であるとみるべきであろう。生鮮、日配、冷凍食品などを中心に、どこまで内食需要に迫れるか、コンビニのチャレンジに注目したい。
中井 彰人:流通アナリスト
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
赤字続きのミニストップ、逆転を狙う新業態は「コンビニキラー」? まいばすけっとに続けるか
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月26日 6時15分
-
「地方に多いホームセンター」が都会進出を狙う訳 人口減少が進む中、大手を軸に再編が進行
東洋経済オンライン / 2024年7月23日 8時30分
-
財閥系ハイパーストアに聞く、新店舗出店や今後の可能性(バングラデシュ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月23日 1時20分
-
他のスーパーとは別物に進化!スゴいローカルスーパーの生存戦略とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年7月8日 19時55分
-
結婚カップル減少、式を挙げない「ナシ婚」増加 それなのに結婚式場の業績絶好調のナゼ 新婚の調査担当者が謎解き
J-CASTニュース / 2024年7月2日 19時31分
ランキング
-
1「なだ万」、オノデラに売却=外食から撤退―アサヒGHD
時事通信 / 2024年7月25日 21時11分
-
2エリート官僚にトラックドライバーの気持ちはわからない…「長時間労働の禁止令」に運転手たちが猛反発のワケ
プレジデントオンライン / 2024年7月26日 8時15分
-
3再送-NY外為市場=円が対ドルで一時2カ月半ぶり高値、米GDP受け伸び悩み
ロイター / 2024年7月26日 6時40分
-
4昨年度の郵便事業896億円の営業赤字、前年度の4倍超…封書やはがき減収・集配や運送委託費増
読売新聞 / 2024年7月25日 18時13分
-
5メルカリ「フルリモート廃止?」に私が感じたこと 一体感を得るには「ある種の非効率さ」も重要だ
東洋経済オンライン / 2024年7月26日 11時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)