なぜ、日本では傑出したリーダーが出にくいのか 日本社会をダメにする「二重の選抜」の非効率
東洋経済オンライン / 2024年5月18日 9時0分
1980年代半ば以降、まったく教養書を読まず、教養的なことを知らないのを恥ずかしいと思う感覚がエリートからなくなっていくわけです。それで、40代後半~50代になって、君たちもそろそろそれなりの立場なのだから教養を身に付けろと言われて、いきなりアリストテレスなどを読まされてすごく苦労することになっています。
私が常々指摘していることですが、日本には「二重の選抜」という非効率が存在しています。日本では、大学教育も含めて、まずは現場の担当者として優秀な人物を育て、その優秀な人の中からリーダーを選抜するシステムになっています。大学入試共通テストに代表されるペーパーテストが象徴的ですが、日本では実務の処理能力が最も高い人を選ぶというシステムで動いているわけです。
数十年かけてリーダー候補を選抜する非効率
官僚の世界やかつての都銀などは、優秀な大学を出たエリートたちが、まずは現場で処理能力を競う仕事をさせられて、その中で高いパフォーマンスを挙げた人が管理者になる。そうした競争というか、スクリーニングが学生の頃から社会的に行われているわけです。
スクリーニングで生き残った者がリーダーに抜擢されると、従来のような処理能力の速さだけではダメだと。大局的な視点でものごとを捉え、倫理観のようなものも含めて、大きな判断ができなければならない。あるいは歴史観や、時代感も持たなくてはならないといったことを言われる。つまり、プロ野球選手として優秀な成績を残してそろそろ引退かという人に、今度はラグビー選手として一流を目指すためトレーニングを行うような非効率なことをしているわけです。
ハーバードやオックスフォード、フランスのバカロレアも、二重の選抜は非効率であるという社会の共通認識があるので、はじめからリーダーになる素養のある人を選抜し、その人たちに対して、徹底したリーダー教育を行っているのです。
堀内:そうしたリーダーになるべき人たちを選抜する試験のあり方が、日本の大学の入試とはまったく違ったものになっているということですね。
山口:はい。たとえばアメリカの大学の入試では何よりも論文を重視し、その中でとりわけリーダーシップを体現した経験を問われます。イギリスもフランスも基本的には最初からエリートを育てる考え方なので、エリートに必要なのはリベラルアーツであると。オックスフォードの看板学部のPPE(Philosophy、Politics and Economics)のPの筆頭というのはポリティクスじゃなくてフィロソフィーですし、バカロレアでは理系・文系問わずに哲学が中心科目として課されています。
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