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なぜ、日本では傑出したリーダーが出にくいのか 日本社会をダメにする「二重の選抜」の非効率

東洋経済オンライン / 2024年5月18日 9時0分

当たり前ですが、リベラルアーツは次の日からすぐに仕事に活かせる類いのものではありません。結局、この企業からは「参加者の評価が低いので、この1回でやめにしました」と言われ、そもそも何をしたくてリベラルアーツの研修プログラムを始めたのかと叱責した経験があります。

ですから、プログラムの中身以上にバイヤー、つまりは企業側の問題が大きいと思います。したがって、ダウンロード型、アスペンのプログラム、対話型のどれがいいかということで言えば、参加者のレベルやプログラムそのものよりも、それを差配している人事部門の思惑がすごく気になりますね。

堀内:いろいろお話をうかがいましたが、最後に、改めて教養とは何かについて、山口さんの考えをうかがえますか。

山口:難しいですけれども、最近、私が感じていることは、教養とは「市民としての基本的な知的基盤」なのではないかと思います。私たちは憲法で基本的人権を保障され、参政権も与えられるなど、近代的な概念としての市民の権利を与えられています。

その権利の多くは生まれながらに与えられているものではありますが、民主主義社会を健全な形で維持していくために、権利を与えられている人には一定の責任が伴い、その責任をまっとうするためには、一定の知的基盤を自己で養う義務を負うものだと考えます。

民主主義の基盤が脅かされている

しかし、今、世界の至るところで、民主主義を支える知的基盤が脅かされるような出来事が起こっています。アメリカではトランプのような人が出てきて、それを熱狂的に支持する人たちがいる。社会全体には目が向かず、何よりも自分たちの利益を最優先に考える。このような市民が多数になりつつある。

政治の話だけではなくビジネスの世界も同様で、企業が誤った方向に進んでいるならば、従業員は批判し声を上げなければならないわけですが、昨今は子供でさえ仰天するような不祥事が日本でも起こっています。自動車にわざと傷つけて保険金を水増しするような不祥事は、小学生でも、幼稚園児でも「そんなことしたら、良くないよ」と言うでしょう。

行き過ぎた資本主義の弊害だという人もいますけれども、私はシステムの問題だとは思いません。資本主義をやめて社会主義に変われば良くなるのかと言えば、そんなことはないでしょう。結局、良き社会とは何か。社会にとって正しいこととは何か。こういった哲学的で根源的な問いに対する解が求められているのだと思います。そのためには、1人ひとりが知的基盤を養う必要がありますし、教養やリベラルアーツを学ぶことも必須なことだと言えるでしょう。

堀内:多くの貴重なお話をありがとうございました。

(構成・文:中島はるな)

山口 周:独立研究者・著作者・パブリックスピーカー、ライプニッツ代表

堀内 勉:多摩大学大学院教授 多摩大学サステナビリティ経営研究所所長 

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