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外国人労働者が日本を働き先として選ばない理由 日本よりも韓国が賃金も文化も魅力的という現実

東洋経済オンライン / 2024年5月18日 10時30分

労働面でも、例えば税制からいえば、日本で働く外国人は、働いて一度退職して帰国するとそれまで納付していた5年分の年金が返ってくるという還付制度があります。これは、外国人を採用している日本企業から「なんとかならないか」と相談をよく受ける問題で、就労から5年経つと辞める人材が多いということです。

企業からすれば、5年も働いてようやく育ってきたところで退職されてしまうというデメリットが大きい。一方、韓国ではミャンマーと租税条約を結んでいることもあり、ミャンマー人からすれば年金に加えて納税した金額の多くの部分が還付されていると聞きます。5年近く韓国で働いたミャンマー人によれば「100万円相当が帰国後に還付された」と話していました。

このように、海外で働く人にとっては「賃金」がどうなのか、が一番のポイントになるのはいうまでもありません。日本と韓国の最低賃金をアメリカドルベースで比較すると、2018年を境に韓国が日本をすでに上回り、2022年には日本の8.5ドルに対して韓国は9.5ドルと差が開いています。

海外就労を希望するミャンマー人にとって、韓国のほうがお金が稼げるという事実はとても魅力的です。日本では「韓国は給料はよいが、職場環境が悪いから」という声をよく耳にします。

しかし、一部ではそういったブラック企業があるかもしれませんが、韓国で働くミャンマー人は日本同様、その現場の様子は母国ミャンマーへSNSなどで細かく伝わっており、職場環境や仕事内容も理解したうえで韓国を選んでいるようです。

私が経営する日本語学校では、全生徒に次のように伝えるようにしています。

「日本では1年で100万円を貯金できるかもしれません。10年働けば1000万円になります。今の皆さんにとっては大金ですが、今のミャンマーで1000万円で何が買えるでしょうか。ヤンゴン郊外の小さなアパートがやっと買えるぐらいです。それを買えば何も残りません。日本に行って少し給料の高いところに転職しても、例えば1000万円が1500万円になれば金額は大きいと感じるかもしれませんが、一生お金に困らない金額にはなりません。目の前の賃金に惑わされず、長い人生の中で自ら稼げるようになるよう、日本で働き、生活してほしいと願っています」

日本を理解してもらう努力こそ必要

日本の厚生労働省は「賃金引き上げ特設ページ」を公開するなど、ベースアップを推進していますが、現実的に賃金を上げることは企業にとって簡単なことではありません。

日本で働く魅力や生活を、ミャンマーをはじめ海外の方々にもっと知ってほしいのですが、日本人が思っているほど海外の人たちは日本を知りません。日本の国際交流基金など、日本の魅力を伝える活動を行っている機関はありますが、韓国に比べれば予算が1桁も2桁も違うと聞きます。

日本のことを理解していないような外国人を受け入れるだけでは、日本国内でも受け入れを理解されず、ひいては治安の悪化にもつながりかねません。日本の魅力を理解し目的意識をしっかり持った外国人に日本を選んでもらえるような努力を、日本も十分にすべきではないでしょうか。

西垣 充:ジェイサット(J-SAT)代表

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